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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第四十話 似て非なるモノ
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いだったとしても其処には人を殺したという罪悪感と、自らの技量を称賛する二心が存在するだろう。
平時が長く続き、研鑽を積み重ねた技量が発揮されず自らが一陣を退く。そんな時代であれば良い時代だとは思うが、自らの力が無駄になったとすれば悔しいという気持ちもまた同時に存在しただろう。
彼が決して許容できない悪性、同じものを自分もまた抱えている。だから彼の苦悩の一片を理解することはできる。
そしてその願望が決して抱いてはいけないものだという事も。
だけど―――
「……貴方は自分を悪鬼と唾棄するのかもしれませんが、その葛藤もまた貴方が人間である証明ではないでしょうか。」
「何が言いたい。」
「さて、私はその答えを持ちかねます。―――しかし、誰かを守りたい・救いたい。その願いが決して間違いであるはずは無い。わたくしはそう、思います。」
例えばだ、一人の男がある女性を妻に迎えた。
男は女に言った「必ず幸せにする。」と、しかしだ、不幸を知らぬ人間にとって幸福とはただの平常では無いだろうか。
普通の事に過ぎないのだ、悲しみも苦しみも、それが在るからこそ人は幸福を実感できる。
逆に、幸福を知っているからこそ絶望を認知出来るともいえる。
この二つの事柄は本来、一枚のコインの表裏のように背中合わせに過ぎないのだ。命の生死がそうであるようにどちらかだけにする、という事は絶対に不可能なのだ。
だから、彼の誰かを守りたいという渇望も………世の悲哀は消しようがない、悲劇に遭遇せずに居ることなど出来ない、幸福はずっとは続かない。という現実を直視した結果なのかもしれない。
彼の本性は、誰かを守りたい―――というモノではなく、別のモノであるような気がした。
「そうですね、温泉でも行かれては如何でしょう。たまには違った環境に身を置くことで見えてくる己もあるではないでしょうか。」
「そんな余裕があるものか。ましてやマスメディアに叩かれる要因ともなろう。」
オーストラリアの一部を租借して其処に一時移住を行っている避難民、ほかにも東北地方に避難している避難民などの難民キャンプでの暮らしは満足とは言い難い。
衣食住何もかもが足りておらず、さらに避難民自体やることがないため先が見えない不安からその思考は悪い方向へと向かう。
―――なんでもいい、斯の空気を何とかしなければ時間稼ぎすら危うい。
そんな中で斯衛の長。五摂家のモノがバカンスというのは醜聞に悪い。
「大尉は未だに重傷の身の上、状態が少々悪化した……となれば致し方ないのではないでしょうか?
―――そうですね、となれば介護の人間も必要。篁中尉も連れ添われては丁度いいかと。」
「……気をまわしすぎだ。」
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