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赤い目
1部分:第一章
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て高志に言葉を返した。どうやら気付いてはいないようである。
「いや、何でもないよ」
「変な子ね。帰ってくるなりそんなこと言って」
 母はどうやら自分では気付いていないようである。そしてまた高志に声をかけてきた。
「今日ね、お昼ラーメン食べたのよ」
「ラーメン!?」
「ええ。ほら、今街で評判のあのお店よ」
「ああ、あそこね」
 学校で葉子が話していた店と同じである。もうラーメンと言われただけでわかった。
「お母さんはじめて食べたけどもうすっごく美味しくて」
「学校でも評判になってるよ」
「そうでしょ。それがね、評判以上で」
 母はさらに機嫌がよくなってきた。
「一度食べたら病みつきになるのよ。お母さん三杯も食べたのよ」
「そんなに?」
「おかわりしちゃって。もう満腹」
「太るよ、そんなに食べたら」
「いいのよ、もうあのラーメンが食べられるのなら」
 どうやらそのラーメンにかなり参っているようであった。
「これからも毎日食べたい位だわ」
「そうなんだ」
「あんたも一回行って来たらいいわ」
 彼女は息子にもそう勧めてきた。葉子と同じ様に。
「とにかく一回食べてみたらいいから。今度行って来たらいいわ」
「気が向いたらね」
「もう、いつもそんなんだから」
 母は高志のそうした素っ気無い言葉を聞いて眉を顰めさせた。
「お父さんと同じなんだから。流行に鈍感ね」
「自分を持ってるって言って欲しいな」 
 そして高志はそうした言葉にいつもこう返すのが決まりであった。
「お父さんのそういうところが好きになったっていつも言ってるじゃないか」
「それはそうだけれど」
 そう言われるともう何も言えなかった。母は黙ってしまった。

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