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鎧虫戦記-バグレイダース-
第41話 暗闇の先へ手を伸ばせば
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は走っていたのか
という思考が、激痛の中で脳内に一瞬浮かんだ瞬間だった。

『‥‥‥と‥‥‥父さんは‥‥‥‥?』

父さんに突き飛ばされた瞬間に爆発した。
それならば、その爆心地にいた父さんは一体どうなったのか。
突き飛ばされたおかげで肩だけで済んだ俺とは違うのだ。
最悪の想像をしている間、肩の痛みはどこかに吹き飛んでいた。
そして、視界の先に転がっているのを見つけた。

「父さんッ!!」

俺は必死に父さんに駆け寄った。

「‥‥‥あぁ‥‥‥ジェーン‥‥‥‥無事で‥‥‥‥良かった‥‥‥」

父さんは今にも消え入りそうなほど弱った声で言った。
目は虚ろで俺の事も本当に認識しているのかと訊きたいぐらいだった。

「‥‥‥‥父さん‥‥‥何だか不思議と‥‥‥左腕‥‥‥‥痛みがないんだ‥‥‥
 だから‥‥‥‥‥‥‥‥大‥‥‥丈夫‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

父さんは弱々しく微笑んでそう言った。俺を安心させるつもりなのだろう。
しかし、俺は分かっている。先程まで父さんに激痛を与え続けていた左腕は
はるか向こうで手の平を上にして転がっていた。父さんは意識が朦朧と
しているため、自分の腕があるか無いかという基本的な機能まで
麻痺してしまっていたのだ。肘から下を?がれた左腕の傷口は
爆破の熱で焼き塞がれたのだろうか。黒々と焦げた肉のようになっていた。
全身も酷い火傷を負っており、生きているのが奇跡に思える程だった。

「父さんは‥‥もう‥‥‥‥いや‥‥‥後で‥‥‥追い‥‥‥‥つくから‥‥‥
 ジェーンは‥‥おじ‥‥‥さん達と‥‥はや‥‥‥く‥‥‥逃げるん‥‥だ‥‥」

父さんはそう言うが、突き飛ばされたおかげで直撃はなかったとはいえ
二人とも爆発で吹き飛ばされた衝撃で気絶してしまっていた。
俺一人では二人を運ぶことはどう考えても不可能だった。

「‥‥‥‥‥もうやだ‥‥‥‥‥‥‥やだよ‥‥‥‥‥‥」

俺は涙を流しながらつぶやいた。

「誰か助けてよ‥‥‥‥‥‥‥」

身体の震えが止まらなかった。死への恐怖が
内部から這い上がって来るのを感じて、俺は身体を押さえた。
しかし、そんな事をしても無駄だった。
周りから微かに聞こえてくる悲鳴。
どこかで鳴り響く爆音。燃えている炎の音。
爆音。炎の音。悲鳴。炎の音。悲鳴。爆音。悲鳴。炎の音。爆音。悲鳴。
炎の音。爆音。爆音。悲鳴。炎の音。悲鳴。爆音。炎の音。悲鳴。悲鳴。
悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴悲鳴。
赤と黒の空の裂け目を漂う火の粉のように天に還っていく人々の魂。
その叫びが聞こえるたびに、恐怖がこみ上がって来た。

「死にたくないよ‥‥‥‥‥‥」

俺はその一心から必死に虚空へと叫んだ
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