第41話 暗闇の先へ手を伸ばせば
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
か」
そして、しばらく二人の間に沈黙が流れた。
夫婦二人が何かを話しているようだが、それも耳に入ってこなかった。
しばらく閉じていた父さんの口がようやく開いた。
「‥‥‥‥‥実は、父さんもなんだ」
それを聞いて驚いた俺は父さんの顔を見る。
父さんは微笑んでいた。今まで何度も見てきたが今回は違う。
その表情には何というか‥‥‥‥‥‥深さがあった。
「もしも彼女が、ジェーンのお母さんが今も生きていたなら、こんな風に
明るく家族三人で食卓を囲めたかもしれない。そう、思うとね」
今まで食事をしていても、こんなに楽しいとは思わなかった。
元々、お父さんがそんなに喋らない人だからかもしれないが。
ふと、俺は母さんの姿を想像で思い浮かべてみた。
俺が本当に小さい頃に病気で亡くなった母さん。
記憶になど残っているはずがなかった。
それでも、もし生きていたなら――――――――
「―――――――楽しかっただろうなぁ」
父さんが俺の代弁をするかのようにつぶやいた。
その目には光るものがあった。同時に
俺の視界もグニャグニャに歪んでいく。
両目から暖かいものが溢れて、頬を伝って、膝に落ちる。
「‥‥‥‥‥‥そうだね」
それは俺の涙だった。しかし、悲しみの感情は全く無い。
ただ、他人に伝えるにはあまりに複雑すぎて俺の語彙力が足りなかった。
「‥‥‥‥あら、手が止まってるわよ?もうお腹いっぱい?」
「どうしたんだよ急に‥‥‥‥何だよ、泣いてんのか?」
手を止めている事に気付いた二人は声をかけた。
そう言われて父さんは親指で目を拭い、俺は両手で擦った。
「いや、家族ってこんなに大切なんだなって改めて思っただけです」
父さんは頭を掻きながら照れくさそうに言った。
こんなに父さんが嬉しそうなのを見るのは初めてだった。
二人も楽しそうに笑っている。こんな初めての事ばかり。
こんなに良いことばかりがある今日。
この光景が、ずっと続けばいいのに―――――――――――――――――
カッ!!
ピシッッ!!
ドゴオオォォオォォォォオオオォォォォオオォォォオオォォオオオオオンッッ!!!!
「‥‥‥‥‥‥‥‥う‥‥‥‥うぅ‥‥‥‥」
俺は唸り声を上げながらゆっくりと身体を動かす。
痛みが走った。だが、どこかに大怪我を負ったわけではないようだ。
最初に一瞬、閃光が走ったと思ったら次の瞬間。
衝撃に身体を吹き飛ばされて、いつの間にか地面にうつ伏せて倒れていた。
部屋の明かりが全て破損したは
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ