暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
災いの種
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グラハン大司教」
「はは。あれは生えたての若い芽。株と呼べるほどの成長はまだまだ先さ。楽しみではあるがね。ま、先があればの話だけど?」

 今日、この場所での不吉な言い回しは、極力避けて欲しいなあ。

「静粛に。これより、主神アリア様の顕現(けんげん)について、情報交換と現状把握、今後の対策を議論していただきます。私語は一切慎まれますように」

 今回の進行役は女性枢機卿か。初めて見る顔だ。
 まだ三十代くらいかな?
 新人だろうに、こんな大事のとりまとめを任されるとは。
 猊下も思い切った人選をなさるものだ。

 教皇猊下の席へと続く階段の中央に立った彼女は、ハキハキとした口調で冷静に、手元の書類を読み上げていく。
 今もなお、女神アリアの御姿を拝した信徒はいないこと。
 女神が現れる場所は、決まって異教団体の上層部に所属する個人の前か、未開拓地域であること。
 ここまでは、アルスエルナで仕入れた情報そのままだが……
 声に合わせて読み進めた書類の内容に、思わずため息が零れ落ちた。

『カストラル国で異教徒とアリア信徒の小規模な衝突あり。原因は異教徒の「アリア信仰の謀略」「我が神への明確な敵対行為」といった主旨の発言と投石によるアリア信徒の負傷。地元自警団の介入で被害拡大は阻止』

 まあ、そう取られても仕方ない状況かな。
 異教徒からすれば、アリア信徒は見てないってところがまず疑わしいし。
 実際に会ったと証言している人達は、その全員が芸人の熱狂的な追っかけ状態になっていて、どんな質問にもまともな回答をしてくれないらしいし。
 証言者からのまともな回答が無いって、なんなんだろうねえ?
 ここ、物凄く重要なところなのに。

 異教徒側の幹部も、さぞ大変だったことだろう。
 信仰の上層に居た人間が、いきなり責務を放り出して改宗に走るなんて。
 そんなのは崇める神への裏切り行為に他ならない。
 (おおやけ)の場で何故? と問い詰めれば、民衆の関心はアリア信仰に注がれ、処罰の対象にしては、事情が呑み込めていない自分の所の信徒達から反発を食らってしまう。
 情報規制を掛けなきゃいけない中。
 目の色を変えて違う神様を讃えだす、元上司や仲間達。
 やってられない気分になったのは間違いない。

 報告こそ、されてないっぽいけど……
 病気と称して殺された人間も、結構たくさんいるんじゃない? これ。
 目撃されている女神が本物かどうかも判らない現状では、アリア信徒達も売り言葉に買い言葉で「お前達の企みだろう!」とか言い出しかねないし。
 困ったものだねえ。

「異教徒に確認された女神アリアが、真の主神アリア様であられるか否かは現在、各地に飛ばした調査隊が追跡中です。書類に記載されている以
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