災いの種
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、三十名ほどの先客が円卓を囲んで着席し。
一見和やかそうな笑顔で、私を迎え入れてくれた。
彼らは、アリア信仰を国教とする国の教会を代表して集まった大司教達。
彼らよりも数段高い席に着いて部屋の中心を見下ろしている二十名ほどの男女が、アリアシエルの司教役に相当する枢機卿達。
そして、入り口真正面奥の一際高い席に着いているのが、アリアシエルの国長で、大司教役に相当するアリア信仰の最高責任者、教皇猊下だ。
お久しぶりな顔から初めて見る顔まで、老若男女勢揃い。
は、良いんだけど。
殺気立ってるねえ。
肌を刺す攻撃的な圧迫感の中、貼り付けてる笑顔が嘘臭くて胡散臭い。
高位聖職者の集いとは、到底思えないよ。
「ようこそ、アルスエルナのコルダ大司教」
頭にヴェールを乗せた老齢の女性、教皇猊下がすぅっと立ち上がり。
その手に持った権威を表す銀色の聖杖で、床をトンッと打ち鳴らした。
室内の空気が少しだけ緊張の色を変えて、更に重くなる。
確か、九十歳は超えていた筈だけど。
よどみない所作と威圧感。
室内とはいえ、離れた場所にもはっきり届く声量。
相変わらずのご健体で、なにより。
「お久しゅうございます、レティシア教皇猊下。特にお変わりなきご様子で安心致しました」
私が礼儀正しく腰を折って頭を下げると。
教皇猊下は、聖杖を持っていないほうの手で円卓を示した。
よく見れば、円卓にある空席は一つのみ。
おっと、私で最後だったか。開始時刻には余裕を持って来たんだけど。
皆さん、相当急いでいるらしい。
当然か。あんな情報を耳に入れてしまってはねえ。
「貴方も元気そうね。私の可愛い金と黒の仔犬達はどうかしら?」
「それはもう元気いっぱいでございますよ。黒犬などは元気が余りすぎて、とても犬小屋には収まりません」
階段を降りながら顔を上げれば、教皇猊下の眉間に深い溝が刻まれた。
ような気がする。そんな気配。
うん。この暗さじゃ、さすがに細かい表情の変化までは見えないよ。
「そう……元気が良いのも考えものね。やんちゃが過ぎないよう、しっかり手を掛けてあげて」
「心得ております」
「皆に女神アリアの御加護があらんことを」
またしても滑らかな動きで着席する小柄な体から目を離し。
内心、やれやれとため息を吐く。
「相変わらず君の所には良い株が集まっているようだね? コルダ大司教」
『アルスエルナ王国』と書かれた札が置かれている席に座った途端。
右隣に座る同年代の友人に微笑まれてしまった。
「良い株と言うなら君の所にもあるだろう。噂は私の耳にも入っているよ。タ
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