三夜目
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主人の父親にまじまじと顔を見られる。
恐怖_____。
ただそれだけが頭によぎった。
「珍しい目をしているな、まるで血の様だ」
「っ…!!」
顎を掴んでいた手を払い後ずさる。
左眼…包帯は外されていない様だ。
ほとんどの奴隷は主人に歯向かったりしないが、俺はその時、反射的に動いてしまった。
「威勢が良くていいじゃないか」
ハハッと笑い声を漏らす。
だが、眼の奥から痛いくらいの殺意を感じて肩すくめた。
「父さんは相変わらずだな、さて君の部屋なんだけどちょっとついておいで」
「はい」
言われた通り後をついていく。
長い廊下を歩く。
貴族はこんな暮らしをしているのか。
「ついた、この部屋を使って」
「はい」
ガチャッ
「ご主人さま?」
「…え」
薄汚い壁、閉め切った窓、ボロボロの床…
そこに少し小柄な少女。
「君も奴隷?」
「…」
「警戒しないで、僕も奴隷なんだ」
「…」
「えっと、僕はホタル。…本名じゃないけどね…」
「…アキレア」
「え?」
「本名じゃない…」
「一緒だね」
ホタルは紫色の瞳を細めて笑った。
つられて頬が緩む。
見た所、年下かもしれない彼女。
細い手足、鮮やかな青緑の髪、小さな身体。
触れたら壊れてしまいそうだ。
「僕、女の子じゃないんだ」
「え…」
「あ、誰にも言っちゃ駄目だよ?」
「約束」
「ひははっ、ありがとう」
独特な笑い方さえ落ち着く。
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