原作開始前
EP.2 ワタルの魔法
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ーダーの心境はとてもではないが穏やかとは呼べないものになっていた。
まさか見切られたのか。ありえない、予想などできるはずがない。何故あんなガキにいいようにやられているのだ。
怒りで支離滅裂になっている思考のまま、男は砂塵を突っ切って突撃。鎖鎌を構えるワタルに再び剣を振り下ろす。
今度は躱せるはずがない。躱したら女に爆炎が当たる距離だ。
男の予想した通り、ワタルは躱さなかった。
「は……?」
思わず間抜けな声が漏れる。
男にとって、目の前の光景はそれだけ理解しがたいものだったのだ。
振り下ろした剣は大量に集中した魔力で淡い光を放つ鎌で防がれたが、爆発はしっかり発生した。が、その爆炎はワタルにも、後ろのエルザにも何の影響も与える事は無かったのだ。
「解析完了。逆流開始」
動作不良かと、悪夢にも等しい光景に現実逃避する暇も無い。
鎖で剣を固定したワタルが剣の腹に手を当てると電撃のような光が刀身に、鍔に、柄に走り、まるでひきつけを起こしたかのように剣が振動し始めたのだ。
「な、何をして……!?」
「過ぎた玩具を壊してやるだけさ」
抵抗しようにも、いつのまにか剣は鎖でグルグル巻きにされてしまい、何が起こっているのか分からないまま、剣は……いや、柄に埋め込んだ魔水晶は爆発した。
幸運だったとはいえ、以前自分たちを討伐に来た魔法剣士が未熟だったがゆえに返り討ちにして奪う事が出来た魔法剣をあっさりとお釈迦にされてしまい、男には呆然と重い鉄の塊と化した大剣を眺める事しかできない。
もちろんそれを許すワタルではない。
次の瞬間、ワタルはリーダー格の男の懐にいた。
「“魂威”!!」
「ガ、フ……!」
男の鳩尾に手を当てて魔力を打ち込むと、男は倒れ、白目を剥いて気を失った。
「ま、相手が悪かったな。……聞いてないか」
カモだと思っていた子供一人に全滅させられたのだ、山賊にとっては厄日以外の何物でもないだろう。
だからと言って同情する訳ではないが、一言だけそう言うと、ワタルは男の魔法大剣を取るとエルザの方に振り返った。
「エルザ、もう大丈夫だぞ」
「う、うん……」
「……怖かったか?」
「そ、そんなことない!」
「そうか、なら良かった」
そう言って笑ったワタルは先ほどまでの鋭い雰囲気ではなく、エルザが知るいつも通りのワタルだった。
そのことに安心したエルザは、山賊たちをどうするのか尋ねた。
「とりあえず拘束して……近くに大きめの街があったから、そこに駐留している軍隊にでも引き渡す。話はそれから、だな」
「なんか、手慣れてないか?」
「そうか?」
怪我を治療してくれた時も思ったが、とエルザは内
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