原作開始前
EP.2 ワタルの魔法
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に高揚するのを感じていた。
豪快に、それでいてしなやかに戦うワタルの武の舞に憧れを抱いたのだ。
そうやって見惚れていたせいだろう。さらに3分の1の戦力を失い浮き足立つ山賊の中で一人、辛うじて冷静さを保っていた者が自分の後ろに回っていた事に、エルザは気付かなかった。
「このっ!」
「キャッ! く、この……」
そしてエルザは山賊に捕まり、うつぶせに倒されてしまう。自分の迂闊さを呪って何とか拘束から抜け出そうとするが、短剣を喉元に突き付けられては抵抗もできない。
「へへへ、おい! 動くんじゃ、な……い……?」
エルザを組み伏せた山賊は人質を取ったことを宣言しようとしたが、視界に嵐のごとく暴れ回り、仲間を蹴散らしていたワタルの姿が無い事に動揺して慌てて探すが……
「……そりゃこっちのセリフだ、馬鹿野郎」
ワタルは既に、後ろにいたはずのエルザを拘束する山賊の、さらに後ろに回り込んでいた。
状況を認識できていない山賊に構わず、魔力を十分に溜めた手をその背中に当てる。
「“魂威”!!」
瞬間、山賊は魔力を打ち込まれて電撃のような炸裂音とカメラのフラッシュのような閃光と共に吹っ飛び、何が起きたのかも分からないうちに気絶した。
「大丈夫か、エルザ?」
「え、……ワ、ワタル!? いつの間に……」
ワタルの手にあるのは先ほどまでの鎖鎌ではなく、忍者刀のような鍔の無い短刀。
そのことにも驚いたのだが、エルザの驚愕はもっと別のところにあった。
一体どうやって、瞬間移動でもしたかのように後ろに回っていたのか、だ。
「これは特殊な魔武器でな。忍者刀は使用者の魔力に応じて身体能力が強化される効果がある」
その効果で、山賊が声を出すより早く後ろに回ったという訳だ、とワタルは説明した。
「すぐに終わる。じっとしていろ」
「う、うん」
見れば、リーダーを別にすれば山賊の残りはあと4人になっていた。
ワタルはその中をエルザがかろうじて視認できるぐらいのスピードで縦横無尽に駆ける。
先程までの鎖鎌の撹乱は技と身体捌きによるものだったが、今度は純粋な速さで駆け回って山賊を翻弄していく。
忍者刀で切りつけたり、先程の強い閃光が走る度に立っている山賊の数が減っていき、リーダー格の男を残して全員が気絶、あるいは呻き声を挙げて地に伏す状況を作り出すのに、さほど時間は掛からなかった。
「さて、アンタで最後だな」
「クソが……ったくとんだ計算外だ、クソッタレ……」
手下の山賊を全員倒し、残るはリーダー一人。
ゆっくりと向き直るワタルに青筋をこれ以上浮かべたら切れるのではないかと心配になるほどに浮かべて、山賊の頭領は
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