原作開始前
EP.2 ワタルの魔法
[5/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
気に薙ぎ払ったのだ。
明らかに見た目以上の長さになって襲い掛かった鎖に対応できず、山賊たちは悲鳴と共に山道の脇の林へと吹き飛ばされた。
これは“換装”の応用。
普段の鎖の長さは振るうのに邪魔にならないほどに留めているのだが、投擲の際は換装空間に保管している余剰分の鎖を鎖鎌へ付け足す事によって見た目以上のリーチの攻撃を可能にしているのだ。
付け足すのが可能ならその逆の分離も然り。鎖の魔力操作で薙ぎ払った山賊を手近な樹木に縛り付けて無力化し、それに使った分だけ鎖を分離して鎌を手元に引き寄せた。
「これで5人」
前方は足止めが成功し、まだ距離がある。後ろは拘束した。残りは左右。
ワタルは両の鎌に魔力を込めながら眼球の動きで左右から山賊が3人ずつ迫っているのを確認すると、右足を軸に身体を捻りながら両手を振り抜いた。
「“魂威・三日月”!」
鎌は空を切ったが、それを嗤う者は居ない。
鎖鎌によって増幅された魔力は三日月の形になって放たれ、左右から一斉に襲い掛かろうとしていた山賊たちに直撃、その意識を飛ばしたのだから。
「11」
気絶した山賊たちを一瞥することなく山賊に向き直ったワタルには、先程まで浮かべていた笑みは無い。
狩られるのはお前たちだ。
油断なく、残りの9人へ向ける視線は油断や慢心など微塵も無く、好戦的に歪められた口元がそう冷たく語っていた。
「……ッ!? クソ、なら数だ! 一気に囲んで魔法を使わせるな!!」
あっという間に半分以上の仲間を戦闘不能にされた事に呆然としていた山賊のリーダーだったが、すぐに我に返ると命令を出した。
頭領と同じように呆気にとられていた残りの8人が迫るが、まるで動じないワタルの背中を、その姿を目に焼き付けるようにエルザは見ていた。
「これが、ワタルの魔法、魔力……」
エルザがこれまで見てきた魔法は、楽園の塔の魔法兵が使う攻撃魔法とゼレフに憑りつかれたジェラールの狂的とすら言えるほどどす黒い暴力だった。
目の前には、囲まれながらも鎖で山賊の得物をいなし、或いは小柄な体躯を利用して懐に潜りながら両手の鎌を振るうワタルの殺陣。
両者とも『相手を圧倒する力』という点では共通している。
しかし、魔力に目覚めたばかりで魔導士としてはまだまだ未熟なエルザではあるが、ワタルからは楽園の塔で感じた魔力とは全く違う、湧水のような淀みない清廉な魔力を感じていた。
「(私もなれるだろうか? あんな風に、強く……!)」
山賊の一人の足首に鎖を巻きつけて、魔力による身体強化と鎖の操作で即席のチェーンハンマーとしたワタルが、巻き込みで3人ほど戦闘不能にしたのを見ながら、エルザは己の胸が静か
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ