原作開始前
EP.2 ワタルの魔法
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の力で投げられたナイフが、荒くれ者の山賊に通用する訳がない。
それが山賊たちと、そしてエルザの共通認識だった。
馬鹿なガキだと嘲笑いながら、射線上にいた男がナイフを避けようとしたその瞬間……
「爆」
ワタルの掛け声と共に、ナイフが風船のように破裂した。
刃の鉄と柄の木が細かな破片となって、前方からワタル達に襲い掛かろうとした山賊たちに襲い掛かる。
「魔力の伝導率が低い唯のナイフならこんなもんか」
しかし、ナイフに込めた魔力が微量だったため、爆発の規模は癇癪玉程度のもの。精々が大きな音を立てる程度で、直接破片を浴びた者も小さな切り傷ができただけだった。
これが使用者の魔力を攻撃力に変換できる魔法剣の類ならば、もっと多くの魔力を込める事でより規模の大きな爆発を起こす事が出来たのだが、今回使ったのは何の変哲もない鉄製のナイフ。魔力を注ぐ器の小ささとワタルの未熟さゆえに不意打ち代わりに驚かせることで怯ませ、足を止めるくらいしかできない。
だが、その程度の時間があればワタルには十分だった。
「換装」
自然体のまま静かに口にすると、その手の周囲が光り……鎖の両端に手持ちサイズの鎌が付いた、二丁鎖鎌と呼ばれる暗器が現れた。
“換装”とは別空間にストックしておいた道具を取り出して持ちかえる魔法だ。
珍しい魔法ではなく、むしろポピュラーな部類に属する魔法だが、それゆえに奥深い。スピーディーな高速換装には高い練度だけではなく扱う武器に関する深い理解も必要とされるのだ。
また、特別な武具を使うのでなければ魔力の消費が少ないのも特徴といえる。
ナイフの爆発で出鼻を挫かれた山賊たちは更に足を止めてしまう。通常の鎖鎌は一方が鎌でもう一方には分銅が付いているのだが、もちろんそれに驚いた訳では無い。
「魔法!? こいつ魔導士か!?」
魔導士の割合はアースランドの人口の10分の1といっていい。
まさかこんな子供が魔法を使えるとは予想もしていなかった山賊たちは、怒り心頭だった表情を驚愕に変えて足を止めてしまう。
だがそれは前方に限った話。ワタルとエルザの陰になってその現象が見えていない後方の山賊たちの足は止まっていない。
「屈め!」
振り向きながら、エルザが慌ててしゃがむのを回転しながら確認し、遠心力も合わせて鎌を片方投擲する。
「な……ガハッ!?」
「何だ!?」
「魔法!?」
風を切って飛んで行った鎌は後ろに陣取っていた山賊の一人に命中し、ワタルの魔法をようやく認識した残りの山賊を驚愕させた。
山賊たちの驚愕はそこで留まらなかった。
「そォらよッ!」
鎌を投げた手でしなる鎖を掴み、魔力を込めて操作。後方にいた山賊たちを一
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