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EP.2 ワタルの魔法
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いる。
「威勢のいいことだな、小僧。幾らか場慣れしているようだが相手が悪かったな……周りをよく見ろ! 1人や2人ならあしらえるかもしれんが、まさか20人も相手にして無事で済むとは思ってないよなぁ!?」
歪んだ笑みを見せるリーダー格の男の言葉に同調してか、周囲の山賊たちも囃し立てたり各々の得物で地面を叩くなどしてワタル達を脅しにかかる。
ワタルの馬鹿にしたかのような言葉に怒りの表情をしていた者もいたが、今は全員が数の差も解せない愚かな子供への嗤いをその顔に浮かべていた。
「(どうするんだ、この状況……)」
エルザには奴隷としての強制労働で鍛えられた身体能力と反乱を起こして得た戦闘経験があったが、圧倒的とも言える数の差に不安を濃くしていた。
そんな彼女とは対照的に、ワタルは余裕を崩すことなく依然としてナイフを弄んでいる。
そして……何を思ったか、笑みを深めた。
「へぇ……で? それが何か問題?」
360度から向けられる敵意と殺意など意にも介さず、山賊たちを嘲笑ってみせたのだ。
「分かったら退けウスノロども。こっちはお前ら木偶に構ってられるほど暇じゃないんだ」
ナイフを弄り回すのをやめて切っ先をリーダー格に突き付ける。
予想もしていないワタルの嘲笑に一瞬呆気にとられた彼らだったが、すぐに全員が憤怒に顔を歪め、怒声を上げ始める。
心中穏やかではないのはエルザも同じだった。
彼女たちが楽園の塔で反乱を成功させたのは、
『失敗すれば未来は無い。だが成功すれば自由を掴める』
という背水の陣から士気が高かった事と、数的有利がこちら側に会った事が大きかったと言っていい。
手元に武器か何かがあれば打開のしようもあったが、残念ながら武装しているのは山賊のみ。
そんな理由があって、この状況を切り抜けるのは絶望的に思えたのだ。
「心配するな、エルザ。言っただろ、魔法を見せてやるって」
そんなエルザの不安を見透かしたのか、あるいはただの偶然か、ワタルは振り返ることなく、あくまで余裕を崩さず、しかし力強く言ってのけた。
「こんな小物、三分もあれば終わる」
ワタル・ヤツボシにとって、こんなもの危地の内に入らないだ、と。
当然ながら、子供にそこまで舐められて黙っている山賊ではない。
「散々虚仮にしやがって……もういい、嬲り殺しだ! 俺たちを舐めやがって、楽に死ねると思うなよ!!」
むしろよく我慢した方だろう。
ワタルはそう思いながら、千切れんばかりに青筋を立てて吠える頭領の怒声を聞き流し、奪ったナイフに魔力を込めはじめる。
そして周りからの襲撃を視覚と気配で察し、あえてナイフを前方に投擲した。
子供
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