原作開始前
EP.2 ワタルの魔法
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そんな自分が、明日を約束できる人に、明日を望んでくれる人に会えた事が、ワタルには嬉しかった。
「おやすみ、エルザ」
普段より穏やかな気持ちで、眠りに入ったワタル。
そんな胸中とは裏腹に、深い眠りの中で見た夢は、赤く染まった床と、狂ったように嗤う、白髪を血に染めた男の夢だった。
それが誰なのか、いったい何をしているのか――そんな疑問だけでなく、夢を見た事そのものも、翌日目覚めたワタルの意識に浮かぶ事は無かった。
「……!」
翌朝、エルザは頬を赤くして目覚めた。
幾分か余裕が出たからか、心の隙を突かれたエルザは昨晩悪夢を見た。
その夢は最近の、楽園の塔の夢。
傷ついた仲間たち、倒れて動かなくなったロブ、そして狂ってしまったジェラール。
その次に見たのは……ワタルの夢だ。
生きる指標として決めた彼も、彼らと同じようにどこか遠い、自分の届かない場所行ってしまうんじゃないか――そう思うとどうしようもなく不安になって手を伸ばすと、ワタルはその手を取って優しく笑ってくれた。
口元が動いたような気がするが、何を言っているのかは分からなかったが、それでも何故かたまらなく嬉しく、安心した。
目覚めた今、心に残るのは最後に夢に出たワタルの笑顔。
自分を安心させるその笑顔に心が高鳴るのを感じたエルザが胸に手をやると、心臓の鼓動が煩い程に音を立てていた。
「ワタル……」
「なに?」
「ひゃ、ひゃい!?」
思わず、といった風に口にしてしまった呟きに答えた者がいて、声が裏返る。見ると目の前に件の人物、ワタルその人がいてエルザはさらに慌ててしまう。
「どうしたんだ、寝ぼけてるなら……」
「な、何でもない!」
「顔が赤いぞ。熱でも――」
「何でもないったら何でもない!!」
「……分かったよ、きついようなら言ってくれよ」
「(起きてるなら言ってくれればいいのに……うう、絶対顔真っ赤だ)」
エルザの顔を覗きこみ、心配そうな声を出すワタル。
近い顔を押し退け、これ以上上げたらどうにかなってしまうんじゃないかと思う程に、エルザは心拍数を上げてしまう。
「朝ご飯は旅館で用意してくれたから……エルザー、聞いてるかー?」
「な、なんだ!?」
「……ホントに大丈夫?」
「平気だと言ってるだろう、しつこいな!」
「ああ、悪かった悪かった。……朝ご飯用意してくれたみたいだから食べようか」
「ああ、分かったよ……」
顔を真っ赤に染めて否定するエルザを、ワタルは心配したが……頑固なエルザに、ワタルは何とか了解するのだった。
= = =
山賊から奪った魔法剣をエルザに与え、制御方法や魔力の運用方
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