1部分:第一章
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でいた。
「こんなところに人がいるんですかね」
「それがいるんだよ」
教授は私の前を進みながら述べてきた。
「ちゃんと戸籍にも載っているよ」
「戸籍にもですか。それじゃあ」
「いるのは間違いない」
このことが私にはっきりと告げられた。
「この山の中にな」
「あれですか」
私は教授の今の話から自分の知識を検索しそのうえで述べた。
「平家の落人の」
「いや、それがはっきりしないようだね」
だがこれは否定された。平家の隠れ里はそれこそ西国のあちこちに存在している。極端なものでは奈良県にすらある程である。当時の都から程近い場所にあったそこにもだ。
「鬼が作っただの天狗だの色々言われていて」
「鬼に天狗」
私はその話を聞いて首を傾げずにはいられなかった。山道を歩くことに苦労しながら。
「またそれは」
「他にも土蜘蛛だったかな。とにかくその辺りははっきりしない」
「まつろわぬ民とかそうしたものだったのでしょうか」
所謂大和朝廷に反抗していた民族のことである。こうした存在のことは古事記や日本書紀にもある。
「それでは」
「おそらくそうだと思うが確証はないな」
これが教授の私の問いに対する返答だった。
「残念なことにな」
「ですか」
「ただ。風葬か」
教授もまたこのことを意識せずにはいられなかったのだった。自身の口からもこの言葉を出してきたのがそれの何よりの証拠だった。
「確かにどんなものか見てみたいな」
「そうですね」
これは本当に私も同感だった。
「普通はネパールの辺りにあるものが有名ですが」
「あの辺りの風葬は岩場に置いておいて鳥の餌にする」
教授は当然ながらこのことも知っていた。
「この辺りのものもそれかな」
「そうかも知れないですね、確かに」
私もそうではないかと考えていた。風葬といえばそれがあまりにも強くそのイメージに残っているからだ。そもそも風葬自体が少ない風習である。
「ここでも」
「うむ。それを確かめる為にもな」
二人でその村に向かうのだった。それから一日かけてやっとある山の頂上にあった村に辿り着いたのだった。本当にやっとだった。
ざっと見たところ五十戸はあった。かなり少ない。かろうじて電気は通っているようで家々にはアンテナが見られた。しかし水道はかなり怪しく井戸が見られた。
「水はあるみたいですね」
「そうみたいだな」
教授は私の言葉に頷きながらその村を見回していた。
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