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少女の黒歴史を乱すは人外(ブルーチェ)
第十八話:紅薔薇の剣姫
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ンマを抱え、更には世間の注目は止められないという、とても苛立つ事態に襲われかねない。


「なら場所をかえりゃ良いだろうが。此処だと人以外にだって被害が出るぞ」
「まどろっこしい事が嫌いと言っただろう? それに騎士が一度申し込んんだ決闘を取り下げられるものか! それこそ末代まで恥となる!」
「……」


 ……話を、聞いてくれやしねえ。
 だからまどろっこしいとかいう理由で、どれだけの被害が出るのか考えられねえのかコイツは。
 人間対人間の喧嘩じゃあねぇんだぞ。

 化け物対化け物だって事を、しかも中二病患者の程度の効かない妄想の産物だってのを、己で理解してないのか……?


「それに―――」


 されど、俺を驚愕させる事態はまだやまない。
 ロザリンドは剣呑な表情を柔らかな物へ変えたかと思うと、何と “楓子” の方へ手を差し伸べた。


「君にも様があるんだ。何、手荒な真似はしないさ……紳士的にエスコートするとしよう、ついてきてくれるね?」
「……楓子を?」
「何……?」


 マリスが無表情ながらも懐疑的な声を出す傍ら、俺はロザリンドの物言いを受けて目をひそめ、そして何時でも動ける様少し足の位置を動かした。
 此処で情人としての思考を働かせるなら、誘拐犯でももう少し言葉巧みに誘うだろうと呆れ、鼻で笑って楓子に同意を求めるところだ。

 ……しかし忘れてはいけない。 
 うちの妹は頭のネジが『殆ど』外れている。
 次に取るべき行動は “話” ではない。


「は、はいぃぃっ? こここ光栄でしゅうぅぅ?」


 ほらな、ピッタリ予想通り。


「―――ふにゃっ?」


 だから予め俺は回り込んでおき、楓子の肩を押さえて思い切り下と後ろへ向け力をかけた。


「兄ちゃん放して! あたしの邪魔しないでっ! 駄目、恋路の邪魔なんて!!」


 バタバタ暴れまわって肘打ちまで打ちかましてくる。
 この阿呆な行動も……不本意だが、そうなってほしくは無かったが当然予測済みで、此方も肘で応戦して勢いを随時止めさせてもらう。

 しかし恩知らずな奴がいたものだ。
 俺は取り返しがつかない場所まで進まないうちに、歩みを止めさせているだけだと言うに。
 何より……連れて行かれなどしたら俺の方へ、間違い無くとばっちりがくるし。


「正気か? お前」
「当たり前ぢゃぁん!?」


 目が渦を巻き血走り、口の端から涎を垂らし、狂気の様相を醸し出している。
 完全にイカれていた。

 正気じゃ無く……狂気だな。


「だ、だ、だ、だ、だだだだだって憧れで理想で完璧な騎士様が其処にいるんだよ!? おいでって手を差し出してくれているんだよォッ!?」

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