第3章 リーザス陥落
第68話 ジオの町の異変
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何も見えない。何も聞こえない。……まるでここは闇の中。
「(サテラ、サテラ、こんな所で終わりたくないっ…… ま、まだ やりたいこと、たくさん、たくさんあるのにっ……)」
サテラは、思わず涙を流した。
涙を流すなんて一体いつ以来だが、判らない。人間の世界に来て、こんな事になるなんて思いもしなかったんだ。
電磁波による雷撃が全身を、……自分の全てを包み込む。
泣けども泣けども、その苦しみから逃れる事が出来ない。そんな中で、頭に過ぎったのは親友であるホーネットと……そして、彼の事だった。
『やれやれ、だな……』
「(っ……!)」
声が、聞こえてきた。それは聞き覚えのある声だ。
『魔の者が、第三世代に……、人に助けを乞う、か。あまり見ない光景だ。これまでも、そしてこれからも無いであろう光景だ。……だが、何故かな。……悪い気はしない』
声だけが聞こえてくる。
そして、いつの間にか……痛みも苦しみも無くなっている事に気づいた。何も見えていなかった筈なのに、今ははっきりと見えている。
――だけど、世界が止まっていた。
全てが止まっている。可視化された電磁波の奔流でさえ、空中で止まっており、見える範囲内だが自分周辺にいる人間達も、表情がそのままに固まっている。
『……随分と人を侮っていたのではないか? 人間を舐めすぎだ。魔の者よ』
「(さ、サテラは! ちょっと油断しただけだ!)」
『それが侮る、と言う事だ。それ故に、お前は消滅しかかっているのではないのか? ……消えてしまったら、全てが無意味だぞ』
「(うぐっ……)」
不思議と、サテラはこの相手とは普通に話せる。相手が誰か判っていて、そして普通に話す事が出来た。
「(……あの時の、あの男、だな)」
『ふふ……』
明確な返事はない。だけど、間違いない。この荘厳さ、そして威圧感もあり、且つ自分を縛っている力。それらが指し示す解は1つしかない。
あの時戦った相手だと言う事。手も足も出なかった。あの相手。いや、戦った……とは言えない。それ程の内容だった。
圧倒、されたのだから。
「(サテラを、サテラをっ! 侮辱しに来たのかっ! 憐れみでも向けに来たのかっ!!)」
サテラは、思わずそう言った。厳密には、叫べた訳ではない。心の中で、強くそう思ったのだ。
『いや、そう言う訳ではない。……言ったであろう? 我は 《珍しい物が見れた》 と。そして悪い気はしない、と。……寧ろ心地よいと言うべきものだ』
魔人と人は相容れない存在だ。
故に、争いが絶えず、それが奴等への貢ぎ物になっているのだ。それを根底から覆すには、こう言った光景が必要だろうから。
「(なら、なら
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