暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第3章 リーザス陥落
第67話 魔人の涙
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たシィルが心配だった。万が一にでも、考えを変えて、彼女に危害を加えないとも限らない。
 
 誰かが魔人を油断させなければならない。


『大丈夫だ。かなみ、トマト、クルックー、セルさん。……志津香』

 心配そうに見ているのは判る。クルックーは表情にこそ、出にくく読みづらいが、その視線が僅かながらユーリから逸れたのを見逃さなかった。

だから、ユーリは笑った。


――……この局面で笑えるのは本当に大したモノだ、と思う清十郎。そしてリックも同様に。


『ランスは抜けてる所が多々ある。頼んだぞ。 清、リック』
『誰が抜けてるだ、コラ! 貴様も以前の様に無様に転がってるんじゃないぞ! 次、見つけたら顔面ラクガキの刑だからな!』
『承知』
『ああ。任せろ』

 2人とも承諾をしてくれた。……つまり、バックアップは万全だ。
 ランスが何か言ってるが……、まぁ ヨシとしよう。ハッパをかけてくれている、と言う事だ。ランス流のだ。

『……ゆぅ』

 最後の最後まで、認めなかった。認めたくなかった人の1人が志津香だ。
 サテラの状態を見て、色々と不安が過ぎった事もあったが、それ以上にあの化物の実力は知っている。……気まぐれなのかもしれないし、ただ遊んでいるだけなのかもしれない。少し、認識を変えるだけで、簡単に態度を変えて襲うかもしれない。それらが頭から離れないんだ。

『大丈夫だ、志津香。皆の事を 任せたぞ』

 ユーリはそう言うとシーザー、イシスの所へと向かった。『残して何処にもいかない』そう約束したんだ。その約束を胸に、ユーリは2人の巨人の前に立つ。

『セイブグハ』
『これでいいだろ?』
『ヨシ。ツイテコイ』
『……』

 2人は、ユーリと聖武具を見て、後は興味ないと言わんばかりにエレベーターの中へと入っていった。その鉄の扉が左右に分かれ、イシス、ユーリ、シーザーの順に入っていく。その何気ない扉が、死への扉、黄泉へと続く門に見えてしまうのは無理もない事だろう。

『『ユーリさんっっ!!』』
『ゆぅっ!!』

 思わず名を呼び、叫ぶ彼女達。隔てるのは、あの人外の巨人だ。……何よりも分厚い壁だった。

 ユーリはそれを見て、軽くウインクをした。


――安心しろ、信じろ。


 と言う言葉、そして。


――信じているからな。


 と言う言葉を言われた気がした。
 そう、自分達もしなければならない事があるのだ。ユーリが時間を稼いでいる間に、シィルを助けて、そしてサテラと雌雄を決する為に。魔人に通じる封印術を仕掛ける為に。

 鉄の扉が閉まった後も、それをしきりに考えていた。……自らに暗示をする様に。

『おい、いつまでうじうじとしているのだ!』

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