第3章 リーザス陥落
第67話 魔人の涙
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事だけは我慢ならない。……人間らしからぬ信念の持ち主なのだ。いや、だからこそ 魔人であるサテラがここまで気に入ったのだろう。
『……漸く、察した様だな? お前に選択肢はない。……我はお前と、そして聖武具を手に入れる為。ここまでしたのだ。 次は良い返事を期待するぞ。……ユーリ』
サテラは、ムチを肩に巻きつける様に構えた。視線の鋭さは更に増していく。もう、選択の余地が無い事にユーリは気づいた。
答える内容が意に沿わなければ、シィルの命を危険に晒してしまうだろう。……100%、とは言わない。だが、1%でも、その可能性があるのであれば、行動は、言動は慎まなければならない。
『くそ……』
ユーリには、選択肢は無かったから、歯ぎしりをしていた、どうしても、仲間の命には変えられないから。
今、サテラと持てる全ての力を使って、全力で向かっていったとしよう。……此処で争えば、サテラが手を出す、出さないのに関わらず、まずは身動きの取れないシィルに危害が及ぶ。
よしんば、シィルを庇えたとしても、ずっと庇い続けるのは相手を考えたら不可能だ。
『ふふふ、そう気を悪くするな。とって食う訳ではない。……我が永遠に傍にいてやろう』
サテラは、ゆっくりとユーリの傍に近づいた。そう、ついに手に入れたのだ。
聖武具、そして この男を……。心ゆくまで、愛でる事が出来る。
心ゆくまで、その強靭な身体を堪能する事が出来る。……無限の時があるのだから。永久に愛でる事が出来るのだから。
だからこそ、時間をかけて 口説くとする。時間なら、幾らでもあるから。
サテラは妖艶な笑みを浮かべ……、頭を垂れるユーリの傍へとゆっくりと歩いていくのだった。
――と言う事で、場面が変わる。時系列も変わる。この場にいた? ユーリの姿は煙の様に消え去った。
「よ、よし! これで行こう! も、もう これしかないぞっ! うん、頑張れ、私っ!」
サテラは、両の拳をぎゅっ、と握り、気合を入れていた。
傍から見たら、本当に微笑ましい。……妄想を存分に膨らませているのは傍から見れば一目瞭然。自分に都合が良い風になっているのだろう。
「……(やっぱり、可愛いです)」
シィルは、サテラの姿を見て 更にほんわかとさせていた。
もう かれこれ、一体どれくらい経っただろうか? 彼女が自分の世界に入っていったのは。
突然、悶えたりして、口調が変わったりして、と忙しそうだな、とも思った。でも、その気持ちはシィルにも とてもよくわかる。自分も、同じだから。
「……(ああ、私もランス様と……)」
シィルは、本当に囚われているのだろうか?
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