6部分:第六章
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第六章
「話は届いてましたよ」
「じゃあこの女の人ですね」
「対処御願いします」
芳香の声は先程よりも強いものとなった。
「迷惑ですから」
「わかりました。それじゃあ」
「どちらにしろ騒音行為をしていたのは間違いようなんで」
まずはその件で、ということだった。
「じゃあ悪いけれどあんた」
「署まで来てね」
これで話は終わった。女は喚き叫んで暴れていたが警官達に取り押さえられそのままパトカーに乗せられて署まで連行された。近所の人達は話が終わったと見て信和と芳香に別れを告げてそれぞれの家に戻った。二人も騒ぎが終わってとりあえずはほっとして両親に話をしてそれからベッドに戻ったのだった。
この事件から暫くしてから。信和の上司であるあの部長が彼等の家に来ていた。そして家のリビングで二人を前にして言うのだ。ビールと枝豆を囲んで三人で話をしている。その話とは。
「あの女捕まったそうだね」
「はい」
「家の前に来た時はびっくりしましたよ」
芳香と信和はそれぞれ部長に応えるのだった。
「まさか。本当に来るなんて」
「来ると思ってたわ」
芳香は夫に対してこう告げた。
「絶対にね」
「思っていたんだ」
「あなた入社してからずっと総務だったわね」
「うん」
会社の話になった。信和はそのことに頷いた。
「そうだけれど」
「だったら知らないのも無理はないわ」
そして芳香は夫の言葉を聞いてあらためて頷くのだった。
「あの女のことをね」8
「部長から聞いてはいたけれど」
「いやいや、話をしたのはあれじゃないか」
部長は言う。
「電車のあれが終わってからね」
「そうですけれど」
「あの女のとんでもなさはね。もう異常だから」
部長はここでまた話すのだった。
「物凄いんだよ。知る前に逃げないといけないレベルだったんだよ」
「まるで化け物ですね」
信和は話を聞いて思わずこう呟いてしまった。
「それって」
「だからよ。絶対に来ると思ってたわ」
芳香はまた夫に話した。
「もうね。だからちゃんと何時でも対処できるようにしておいたのよ」
「そうだったんだ」
「芳香ちゃんのおかげで話は無事終わったな。しかし」
部長はビールを飲む手を止めグラスをテーブルの上に置いたうえで腕を組んだ。そうして考える顔にもなってそのうえで言うのだった。
「何故だろうな」
「何故とは?」
「いや、異常な人間だったな」
あの女のことだった。
「ああいうのを人格障害者っていうんだろうな」
「そうですね。しかもかなり重度の」
「ああした人間もいるのか」
彼は腕を組んだまま述べた。
「というよりどうしてああなったんだ?どんな生き方をすればああなってしまうんだ」
「おじさん、それだけれどね」
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