6部分:第六章
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芳香は何時の間にか普段の言葉になっていた。しかしこれも彼女がもう会社にはいないので問題はなかった。会社を離れればもうその関係もなくなる。
「あの女最初は普通だったらしいのよ」
「普通だったのか」
「ええ。顔は元々ああで」
顔だけはそうだったらしい。
「それで子供の頃からずっといじめられて馬鹿にされて」
「ふん、それで」
「誰も友達いなくて。それでああいう人間になったらしいわ」
「そういうことだったんだ」
信和は妻の話を聞いて大きく目を見開いた。
「最初からじゃなかったんだ」
「最初からとんでもない人間も確かにいるわ」
芳香はこうも言う。
「もうどうしようもないのはね」
「いるんだ」
「けれどあの女はそうじゃなかったわ」
そして女のことに話を戻した。
「そうじゃね。なかったのよ」
「顔や容姿のことでいじめられてそれで心が歪んで」
「ああなってしまったのよ」
そういうことであった。
「ああいうふうにね」
「それを聞くと悲しいね」
「そうですね」
部長も信和も芳香の言葉に頷く。話を聞けばそうも思う。しかしであった。
「けれどだからといってああしたことをしていい理由にはならないからな」
「そうですね。本当に」
信和の言葉は実際の被害者だからこその言葉であった。
「どんな理由があったにしろ」
「全くよ」
芳香は夫の言葉に頷き後は三人で楽しく事件が終わったことを祝った。世の中というものは時として信じられないような人間をその中に置いている。
醜い女 完
2009・2・27
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