外伝
外伝《絶剣の弟子》C
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朝、目が醒めるとアミュスフィアを装着したままだった。ログアウトした後、取り外すことなく寝落ちてしまったらしい。寝相で高価な機械を壊してしまわなかったのは運が良かった。
「……起きなきゃ」
今日は平日。普通に学校がある。
気分は良くなっていた。曲がりなりにも、自分の葛藤に折り合いを付けたからだろう。
冷蔵庫の中に貯蔵してある栄養ゼリーを取り出し、トーストを齧りながら家を出る。マンションのエレベーターに着く頃にはそれを胃の中に収め、水分補給代わりにゼリーを流し込んだ。低血圧故に朝が苦手でおまけに今日は少し寝坊してしまった。朝食としては不十分だが、仕方ないと諦める。
学校は家からそんなに遠くない。徒歩で20分くらいだ。1ヶ月と少しが経った今も通学路の風景は見飽きないもので今のところ退屈しないで登校していた。住宅街を抜け、商店街と駅前を脇目に歩いて行くと学校はすぐに見える。数年前に統廃合によって中高が同じ敷地内になり、編入された高校の新しく建てられた新校舎を最初に見たときはその大きさに思わず口を開けて放心した。校庭が中高共有になるらしく、それでは都合が悪いこともあろうということで、校舎を2階層分丸々屋内運動場にし、全生徒を収容する体育館まで別にこさえたのだから当然と言えば当然だ。ちなみに同じ敷地内と言っても中学からエスカレーター式に進学出来る訳ではなく高校に行くには試験を要する。加えて自分のような高校から入った者が混じるとかなりの人数になる。故に同級生の顔と名前を全て一致させることは難しい。たった1ヶ月ではクラスメートの顔と名前を覚えるので精一杯だった。
席が近い、最近よく話すようになった数人と挨拶を交わし、席に着いて始業を待つ。普段はこの時何かを考えるということはしない。ぱらぱらと教科書や購入した本をめくっていてもそれは手慰みであって、意味のある行為ではなかった。しかし、今日に限っては思考が昨日のことへ流れていく。担任の教師が入って来て号令がかかるまで、そのことが頭から離れなかった。
夜。課題を終わらせるとアミユスフィアを装着する。昨日からユウキさんがALOに入っていれば、あのメッセージに何か反応があるかもしれない。
「…………」
あるいは、もう見限られて何も返ってこないか、だが……。
ともかく、もう一度会ってキチンと謝らなければならない。
「リンク・スタート」
体を寝かせたベッドが沈み込み、底の知れない暗闇に落ちていく感覚。だんだんと落下スピードが落ち、突如として視界が色鮮やかになる。
ここは《イグドラシル・シティ》のセーブポイント。ゲーム内の時間は丁度昼頃らしく、アクセス時間が最も多い時間帯とあってたくさんの人がいた。
「……とりあえず、リ
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