SS:火と火が合わされば
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は何というか、すごく嫌だ。そんな汚い大人になるくらいなら、俺は馬鹿でも見下されても正直でいたい。俺は、マズイとは思っていてもとうとう苛立ちを隠しくれなくなって警官を睨みつけた。
「………随分反抗的な目をしてるね。携帯も渡そうとしないし、もしかして本当に『何かした』のかな?」
「勝手なこと喋るのは結構ですが、妄想は頭の中だけにしてほしいですね。あんたの腹立つ態度を見れば誰だって腹も立ちますよ?」
ああ、言ってしまった。これ、お泊りパーティ台無し決定かもしれない。
木棉季を悲しませるかな……と後悔したが、俺は自分で放った言葉を自分で偽りにしたくなかった。それに、どんなに邪推されようとも俺と木棉季はちゃんとした絆で繋がっている。それを否定するような警官の態度は――うん、やっぱり許せないな。
俺が意思を改める気がないことを悟った警官は、勝ち誇ったように俺の手を掴んだ。
「決まりだな。では署まで任意同行を――」
「シャランラー♪シャランランラー♪」
突然。
街角に透き通った可愛らしい歌声が響いた。
警官の手を引きはがすように強く俺の手を握った木棉季は、力強い声で歌う。
その日その時に頭で流れる、彼女の心の歌を。
あの人と一緒に過ごす、散らかった部屋の中で――
ボクと貴方、二つの『火』が合わさればどこまでいけるかを語らう――
二人で力を合わせれば、ボクたちは『炎』になれるよねって――
『炎』になったボクたちは、もう友達なんて安っぽい言葉じゃ表せない――
今までは通りすぎていた野次馬が立ち止まった。警官はそんな彼女に顔を顰めながらも無視して俺を引こうとするが、木棉季は俺の手を握ったままその場から一歩も動こうとしない。
「おい、なんだアレ?」
「やだ、あの子ったら歌上手ー!」
「なんだよ、あの兄ちゃん悪い奴じゃないのか?すげぇ仲よさそうじゃん」
「あ、アイツ知ってる!隣町の公園でギター弾いてる人だ!」
「おや、懐かしい歌だね。あんな小さな子が知ってるとは意外だよ」
目線は木棉季に集まっていくが、それは先ほどまでの胡乱気なものではない。
場の空気が――流れが変わった。警察官が職務をするときの「あいつは悪者なんだ」という空気が、俺から警官の方へ流れている。
警官が状況を面倒に思ったのか、もう一度俺を引っ張ろうとした。
俺が引っ張られた所為で、手をつないでた木棉季もバランスを崩し、歌が一瞬途切れる。
次にぶつけられた無遠慮な視線が一斉に警官へ――いたいけな少女の望みを邪魔しようとする大人へと注がれた。立場的に俺のいる場所は変わらないが、木棉季の歌は次第に周囲の人に状況を理解させていく。
年の離れたあの二人はとても仲がいいのに、何かの
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