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キル=ユー
6部分:第六章
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第六章

「俺はちょっと車があるから駄目だがあんたはそうじゃないだろ」
「ええ」
「やるかい?俺のおごりだ」
 そう言ってシャンパンを差し出した。俺はサイダーだ。
「いいんですか?」
「女の子が遠慮するのはアメリカの流儀だったかい?」
 ヤンキーガールは遠慮なんて知ったことじゃない、そもそもアメリカ人自体がそうだと言われてるが俺は遠慮がちな女の子はどうにも苦手だ。
「やりなよ。女の子は酒が入ると色っぽくなく」
「面白いこと言いますね」
「まっ、日本人みたいに奥ゆかしくってのはなしでな。思いきりやってくれ」
「はい」
 彼女は笑顔で俺のグラスを受けてくれた。そして二人向かい合ってソファに座った。お互い裸の身体にガウンを羽織っただけだ。彼女の金髪が綺麗にチョコレートの肌の上になびいていた。
「ところでな」
 俺はまた目に入った。バッグのLの文字いついて聞くことにした。
「何ですか?」
「君のバッグのことだけどな」
「私のバッグですか」
「ああ。何でLのイニシャルがあるんだい?」
 俺はそれが少し気になっていた。だから尋ねた。
「あれですか?」
「ああ。あれは何か意味があるのかい?」
「あれ。おまじないなんです」
「おまじない」
「はい。私のラッキーワードはLだって言われて。それでバッグに書いてるんです」
「へえ」
 これは意外だった。もっとも何でそんなものを書いているのはどう言われてもこう思っただろうが。
「それで書いてるんですよ。他にも部屋のアクセサリーとかにも書いてますよ」
「身体には書いていないのかい?」
「身体って!?」
「その綺麗な身体にさ。そこには書いてないんだね」
「だって新しいラッキーワードが出たらすぐに替えますから」
 彼女は笑ってこう述べた。
「それまでの間ですから。それはないです」
「そうか」
「ですから何の意味もないですよ。驚きました?」
「いや、そうじゃないけどな」
 俺は特に驚くことなく言葉を返した。
「ただ。何かと思ってね」
「そうですか」
「大した理由じゃないならいいさ。じゃあ乾杯するか」
「はい」
 俺達は酒とサイダーを楽しんだ後で次はベッドで二人で楽しんだ。仕事の後の楽しい一時を過ごした。満足すべき話だった。その文字のことに後になって気付くまでは。
 次の日目が覚めると身体がだるかった。それにまず気付いた。
「昨日のせいか?」
 最初に思ったのはこうだった。
「あまり遊んだつもりはないがな」
 身体全体がだるい。そう思ったのも無理はなかった。
 だが今までそんなことは一度もなかった。次にそれに気付いた。
「そんなわけねえな」
 今までもっと遊んだことがある。だがそれでもこんなことはなかった。
 身体の頑丈さには自信がある。
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