第五十三話
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れた右腕の切断部、ねじ切られた骨、派手に損傷した筋肉、血管、よくわからない器官。見てるだけで気持ち悪い。このままだと徐々に腐っていく部位が意志をもったかのようにゆらゆらと動き始めていたんだ。
俺は無い腕を使って野球の投手のように振りかぶり、力任せに振り切った。
にゅるにゅるといった奇妙な感覚が無いはずの腕を伝わっていく。
ヌルヌルしたものが擦れる音も聞こえる。それはやはり右腕の方だった。
俺は目をやる。
????ありえねえ。
そこには粘度の高そうな透明のジェルのようなものが塗りたくられテカテカしている腕があった。
突然生えてきていた!
そんなのあり得ない。
【よし、まあまあってところかな】
そう言って俺は生えてきた、生まれたての新品の右腕をぶるぶるんと振り回す。
【感度良好。良い感じだ】
キシャー!!
やっと状況が飲み込めたのか、ムカデ蛭町は王女を襲うのをやめてこちらを向いていた。ギラギラと
した目でこちらを睨んでいる。
【気持ち悪い生き物だな、お前。さっさとぶっ殺してバラバラにしてやるよ】
そういうと無造作に、奴に向かって歩き出す。
蛇の頭がいきなり地面にまで下がる。同時にムカデの体がくの字になる。高々と持ち上げられた背中にはあの瘤があった。無数のトゲが生えたあの瘤が。
部屋中に響き渡る爆発音がし、再びトゲが一斉に発射された。
今度は全てが俺のほうに向けられている。
何十本のトゲが猛スピードで飛んで来た。
さっきの攻撃より速度は速い。
俺は回避行動を取らずに、ずいと前に歩く。無数のトゲが直ぐ側にまで接近している。俺は手で顔を覆い、目を閉じようとした。
当然、俺の体は俺の意志と関係なくなっているから、そう思っただけだった。現実の時間は流れ続けている。
無数のトゲは止まっているようにしか見えない。完全にスーパースロー画像が眼前で展開されている。
俺はトゲをかわしながら蛭町へと接近していく。どうしても邪魔になるトゲは片手で掴むと、無造作に後へと放り投げる。
飛んでくるトゲはゆっくりと動くのに、放り投げたトゲは普通の時間の中で動いているようにくるくる回って飛んでいき、壁に当たって粉々になった。
これは恐ろしい速度で俺が動いているということなのか?
そんな疑問を感じる内に、蛭町の体が直ぐ側にあった。
蛭町も俺が高速で移動し接近していることを感じ取ったんだろう。回避行動を取ろうとする。
【ばーか、遅えよ】
ニヤリと笑うと、俺は奴の背中の瘤を両手で鷲づかみにする。
そしておもむろに引き千切った。
「ぎょびー(^^;」
間抜けな声を上げて、ムカデ体の蛭町が飛び上がった。背中からは大量の出血。
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