第五十一話
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を与えられる。
右腕を引きちぎられたのが分かった。
くちゃくちゃの噛む音が聞こえる。
くそっ。俺の右腕喰ってる。
吐き気が襲ってくる。しかし逃げることはできないんだ。
もう死んでしまいたい。
唐突に俺の頭の中にその言葉が浮かんできた。
うん、そりゃ死んだら楽になるだろうな。何でこんな酷い目に逢わないといけないんだ? 俺が何をしたっていうんだ。こんな痛い思い、苦しい思いをどうして耐え続けなきゃなんないの? もうさっさと楽にしてくれ。本気で祈った。この地獄から逃れたい一心だった。
……王女を残してか? 親友を残してか? 見殺しにするのか? 寧々のようにまた罪を重ねるというのか。出来ることを全てやり尽くしたわけでもなく、ただ劣勢で苦しいからといって楽な方向に逃げようとするのか? 卑怯者の所行を繰り返すのか?
そんな批判が俺の奥底にわき上がる。
それに蛭町は俺を殺したら、あの二人も生かしては置かないだろう。どんな残虐な殺し方をされるか考えるだけで気が狂いそうだ。
王女は俺を助けてくれたんだ。なのにまた俺はへまをやらかせて死にかかっている。彼女に恩返しをすることなく死んでしまうのか?
そして親友の漆多。俺はあいつを裏切り、寧々とキスをした。そして彼女を守ることさえ出来ずに死なせてしまった。そしてさらに親友まで死なせてしまうのか? 親友を裏切ったままで、俺は死んでいくのか?
考えてみれば、いつも俺の人生ってうまいこと行かなかった気がする。
何かを手にしようとしたときには必ず邪魔が入ってしまう。自らの手に届きかけたものが霧散する。そんなことばかりの繰り返しだった。いつも何かに邪魔をされ、いつも空しさ悔しさだけが残っていたんだ。
今度も圧倒的な力を手に入れたつもりだった。何もかも思い通りになるような気がしていた。だけど現実はどうだ。俺はボコボコにやられ、瀕死状態だ。瀕死状態なんてこれで2度目だ。僅か数日でこんな目に二度も会うなんてよっぽど運が悪い。……そんな俺の運の悪さなんてどうでもいい。今はそれどころじゃない。
絶体絶命の状態。もはや逆転のチャンスはなさそうだ。両目は光を失い、どうやら両足は千切れているようだ。両手だってどうなっているかわからない。全然力が入らないんだから……。
俺が立ち上がらなければ、王女は護れない。漆多も見殺しにしてしまう。
俺が負けること、それは俺の周りの人間が皆殺しにあってしまうことなんだ。妹の亜須葉も、幼なじみの紫音も、奴はなぶり殺しにするって宣言していた。きっとこいつはそれを実行するだろう。俺は彼女たちを助けることも、それどころか危険を知らせることさえできない。無力に苛まれたまま、惨めに死んでいかなきゃならないのか?
助けてくれ。
助けてく
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