第五十一話
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い音を立てる。
鼻から大量の血があふれ出る。口内にさびた鉄のような味が広がる。
歯が何本か逝かれたかもしれない。
太股に奴の発射したトゲが突き刺さったんだ。それだけは分かった。そしてそれはさっきと同じくさらに俺の体にめり込むべく回転する。今度は動くことが出来ない。耐え難い痛みを感じるのにどうすることもできないんだ。
ドン!
爆発音がしたと思うと、衝撃とともに両足の付け根が焼けるような痛みを発する。
「うがっ」
思わず口からでる悲鳴。
王女の悲鳴が聞こえた。
トゲはある一定まで目標物の体内に入り込むと爆発する。激痛の中、俺はそれを知った。気を失わなかったのは俺の精神力の強さなのか、それとも蛭町が体内に打ち込んだ毒物の効力か。
ぎりぎりのところで俺は踏みとどまった。いや踏みとどまされたんだろうか?
両足の感覚は無い。……動かそうとしても、重い? 感覚がない? 無い?
先ほどの爆発から想像するまでもなく、両足がぶっ飛んだのは間違いない。
まずい。これは本気でまずい。
ただでさえ、劣勢だというのに、両足を吹き飛ばされるような重傷を負ってしまったら、回復が間に合わない。
焦りの中、直ぐ側に蛭町の気配があることに俺は気づけなかった。
「はーい、大丈夫」
聞き慣れた蛭町の声が直ぐ耳元で響いた。
俺はこの場から離れようと藻掻くが、右腕を万力のような力で押さえ込まれて動きが取れない。
目が見えないこの状況がどれほど不利か思い知らされる。
何が起こっているか分からないんだ。ただ、どんどん劣勢になっていることだけは分かるんだけど……。
「姫、……逃げろ……。漆多と逃げてくれ。頼む」
情けないほど小さな、消えそうな声しかでない。
哀れな肉塊になりつつある俺にできることはもはや、王女の逃走を促すことしかできないんだ。
彼女に肉団子状態の自分を見せるのは二度目だな。……そんなことを考えたりしている自分に、ああ、もう俺は負けるんだ、死ぬんだなという実感が沸いてくる。
突然、右腕を何かに鷲づかみにされたような感覚。直ぐにそれは蛭町の蛇面の口に噛まれたのだと分かった。もの凄い力で俺の腕を物理的に曲がるはずもない方向へと捻る。
耐え難い痛みにうめき声を上げ、必死に抵抗しようとするが体は言うことを聞いてくれない。
ぶちり。
右腕から奇妙な音。そしておなじみの激痛。
誰の声か分からないような悲鳴が聞こえている。それが自分の声だとはしばらく気づかなかった。
痛みが起こり、さらにそれに被さるように更なる痛みが襲ってくる。もう気が狂いそうだ。
できたら狂ってしまったほうが幸せなんだろうな。でもそうはさせてくれない。意識はより一層クリアになる。そしてさらなる痛み
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