第四十九話
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だ。出口を求めて移動するが、狭い体内に対して取り込まれた人間の数が多すぎる。やがて彼らはぶつかり合い絡み合う。
眼前で繰り広げられる光景。これは蛭町がわざと見せているのか?
取り込まれた人間達が絡み合い必死に出口を求める。そして恐ろしい事が起こる。絡んだ腕や脚がその接触した部分で結合を始めたんだ。
くっついた手や足を奴らはふりほどこうとするが、逆に腕と腕、脚と脚、いろんな箇所がくっついて離れないようだ。そして体は融合を始める。もともと一つのものだったように組織が溶け合いくっついてしまった。
古い本で見たシャムの双生児の多人数版だ。複雑に結合しまっていて、もはや分離は不可能だろう。
おまけに蛭町のミミズ体の組織も彼らの体と融合している。
もう複数の人間による一つの生命体になったとしか思えない。
本当なら助けるべきなんだろうけど、無理だ。
今は自分自身の回復を図らなければならない。俺は正義の味方なんかじゃない。
悲鳴、うめき声、唸り声がしばらく続いている。
「助けて! 助けて! 」
「痛いよう、苦しいよう」
「熱いよう」
「俺の腕、どうなってるの」
情けない声が伝わってくる。彼らは必死に助けを求めている。理不尽な現実から逃れようとわらをも掴む思いなんだろう。
俺は耳を塞ぎたくなる。
ぷるぷるとその蛇ミミズは震える。
「シュウ! 何をやっている? そいつを早く殺すのよ。でないと……」
唐突に王女の声が響き、俺は我に返った。
何か目の前で繰り広げられる不気味なショーに魅入られて何も出来ずにいたんだ。
明らかに戦闘力が上がっている……。戦闘力を数値化する機械でもあれば、蛭町は仲間を喰う前と今では倍近い戦闘力の差がでているんだろう。感覚でそれは俺にも分かる。
今叩かなければ、完全化すれば俺に勝つチャンスはあるんだろうか?
まだ折れたり潰れたりした手は治っていない。しかし待ってられない。
殺せ。
拳が潰れていたって攻撃は出来る。今を逃せば今度は俺がやられる。
俺がやられるということは、王女も漆多も守れないってことだ。亜須葉も、紫音も、誰も彼もみんな殺されてしまうんだ。
絶対にそんなことはさせない。
体力の回復は完全じゃない。でもそれを待つ時間がないんだ。
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