第四十五話
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なでる。
プチプチという柔らかな感触が指先に伝わってくる。
なんだかくすぐったい。
そして右腕は肩のすぐ上、左腕はちょうど肘のあたりに見える瘤をそっと掴んだ……。
少し暖かく柔らかい。
そして少し力を入れて、それを握った……。
ぷしゅ。
裂けるような音がして、赤黒いものが瘤からあふれ出した。
あまりにも簡単に壊れちゃった。
刹那、止まった時間が動き出す気配。
無音の世界がいきなり騒々しくなるのを感じた。
ぶしゅる。
直ぐ近くで何かが千切れるような音が聞こえた。それも2回。
相変わらず俺の体の上では蛭町が喚きながら両腕を回転させている。
その彼の背後を2つの物体が舞っていくのをぼんやりと俺は見る。それぞれは何かから切断されたもののように見え、真っ赤な液体をロケットのように噴射させながら飛んでいる。
くの字型になったその2つ、いや2本だな。その物体はくるくると宙を舞い、やがて床に落下した。
結構派手な音を立てて落ちた物体は、床に真っ赤な液体をぶちまける。
釣りあげた魚のように床で少しの間飛び跳ねたそれは、やがて動かなくなった。
「ほげ、なんじゃこれ」
蛭町が思わず声を上げて、それを見る。
グルグルと腕を回しているが、その先にあるべきはずのモノがないことにまだ気づいていないようだ。
「腕じゃねえか。誰の腕? 」
辺りをきょろきょろと見回す。
眼球は飛び出しそうなほど露出し、血走った彼の瞳はもはや人間とは思えない。
辺りを見、俺を見、そして自分の腕をみた瞬間、彼は絶叫を放った。
「俺のかよぉ〜! 」
初めて自分の両腕が失せたことを認識し、神経が繋がったのか?
「そう、お前の腕だよ……」
俺は囁くように言うと、両手を彼の顔へと差し出す。
彼のおでこ付近を漂っている瘤を掴もうと思ったんだ。
「ひへぇっ! 」
咄嗟に危険を察知したのか、蛭町は瞬時に後方へ飛び去った。
「てめー何しやがったんだ」
両腕を失ったことでバランスを崩しているように見える。
俺を見る眼は怒りに燃えている。
「くそうくそう! 」
ジリジリと後退をしながら、逃げ道を探しているよう辺りを見回す。
蛭町が近づくことで一緒にいたチンピラどもは恐慌状態に陥り、奇声を上げて必死に這い回り彼から離れようとする。
「そっちに逃げても無理だよ」
俺は一歩脚を踏み出す。
奴の背後は壁。逃げ道は無い。逃走するためには俺の横を通過し、ドアから出て行かなければならないんだから。
「終わりだな」
俺はさらに一歩踏み出す。
「何で勝てない。俺が負けるはずがない……。くそくそ。なんでこいつに。なんで恥をかかされたままで負けなけれ
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