第十六章 ド・オルニエールの安穏
プロローグ 恩讐
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―――ブ厚い雲が垂れ込み空を覆っている。
空と大地を雲が分かち、闇を照らし出す月や星々の輝きが一切届かない。
森の奥深く、文明の火は遠い。
唯一の明かりである天上の光が届かない地上―――自身の指先さえ見えない闇の中、粘度さえ感じさせる生微温い空気が揺れた。
木々がざわめき軋んだ音が鈍く響き―――砕けた。
空間それ自体が揺れるかのような衝撃が走る。
大地が揺れ―――割れ―――土砂が巻き上がった。
雨のように砂が、岩が降り注ぐ。
地殻ごとめくり上がったかのように大きく傾いた数十本もの木々が、衝撃が走る度に次々に吹き飛んでいく。
長く伸びた根が、土砂を絡めたまま空を飛んでいっている。
内臓を震わせる重く鈍い音が断続的に響く中―――耳を引き裂くかのような鋭く、鈍く、鋼が引き裂かれるような異音が響く。
一切の光のない闇―――土砂や木々、巻き込まれた獣だったモノの肉片が空を舞う中、輝く白き残光
巨大な鉄塊同士を高速で叩きつけているかのような衝撃と轟音が響く毎に光が闇を切り裂いた。
声が、響く。
―――――――――■■■■■aaaaaaaaaaaaa
ソレは咆哮。
――――――■■■■■aaaaaaaaaaaaaaa
ソレは歓喜―――呪いの―――復讐の叫喚。
―――■AAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
迎え討つは、悪鬼羅刹不浄を砕く清廉なる獅子吼。
―――ッアアアァァァァァァ
闇の中互いに一撃を繰り出す度に大気が揺れる。
黒に塗りつぶされた世界を映し出すは剣戟の残光。
そして―――一際耳を貫く激音が響いた。
それは大気を震わせ大地を裂き、更には天を蓋するぶ厚い雲に穴を穿つ……。
「っ、は、ぁ、くっ…………」
a、aa、a…………。
空に空いた穴から月の欠片が降り注ぐ。
スポットライトが舞台で踊る主人公を照らすかのように、空から落ちてきた光が剣戟の主の姿を照らし出した。
浮かび上がる二つの影。
二人の騎士。
一人は―――剣士。
蒼き衣に白銀と紺碧の鎧を身に纏い、黄金の剣を構える女騎士。
一人は―――槍兵。
黒い装具に身に付け、右に二メートルを超える赤き長槍、左に一回り短い黄の短槍。
翼を広げ羽ばたく直前の鳥のように、二振りの槍を大きく掲げるニ槍の騎士。
砕け、裂かれ、破壊の限りを尽くされた大地で対峙する二人の騎士。
黄金の剣を構えた女騎士は、深い翠の瞳をその手に持つ剣の如き硬き決意に漲
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