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キル=ユー
3部分:第三章
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鹿高いがそれでも異様に高かった。
「何でもその弟にかなりやられたらしくてな、依頼主は」
「かなり、ね」
 それを聞いて依頼主が誰かおおよそわかった。ザリアーノは最近賭博でかなりもうけている。それでやられたとなればその対抗馬だ。丁度ついこの前までニューヨークの裏の賭博を仕切っていた家の奴等からだと悟った。
 ザリアーノ家じゃ今名前が出ているドンの弟がそれを仕切っている。だからそれを何とかしたいのだろう。
「それでその弟をズドンとやって欲しいってわけだ」
「それだけで一千万ドルか」
「どうだい、やるかい?」
 斡旋屋は尋ねてきた。
「嫌だってんなら別の仕事もあるんだけどな」
「おい、今更そんなことを言うのかよ」
 俺は電話の向こうの斡旋屋に苦笑いを浮かべてこう言ってやった。電話の向こうからじゃ苦笑いなんて見えはしないのはわかっているが。
「そんな美味い話を持って来ておいてよ」
「じゃあ受けてくれるんだな?」
「当たり前だろ」
 俺はすぐにこう言い返した。
「一千万ドルの仕事なんて滅多にないからな」
「よし、それじゃあ話は早いな」
「ああ」
「頼むぜ。終わったらすぐに教えてくれよ。こっちでも確認するからな」
「わかった。それじゃあな」
「よし」
 こうして話はまとまった。俺は電話を切ってテーブルに向かった。そしてそこに置いてあるノートパソコンのスイッチを入れたのだ。
「ザリアーノ家っていうとだ」
 まずはターゲットに対して調べることにした。
「ふん」
 俺のパソコンは普通のパソコンとは違う。裏の世界に関することがしこたま入っている。そしてそこで色々と調べた。その日はそれで夜まで過ごした。
 仕事自体は結構楽に話を進められそうだった。ザリアーノの弟は大のオペラ好きで特にプッチーニがお気に入りらしい。そして次の日はメトロポリタン歌劇場で三部作をやる。プッチーニの作品の中でも変わったやつだ。
「ルイージみたいにやってやるか」
 三部作は三つの作品からなっている。ルイージというのはその中の一つ外套に出て来る間男だ。誘惑した女房の旦那に殺されるという救いのない奴だ。思えばザリアーノの弟は賭博場を取っている。間男に似ていると言えば似ていなくもない。おあつらえむきだと思った。
 仕事は夜だ。俺は次の日メトロポリタン歌劇場に向かった。
 前に噴水がある大きなガラス窓の歌劇場がそこにはあった。中からシャガールの絵が見える。これがメトのトレードマークだった。
「さてと」
 俺はとりあえず身を隠すことにした。もう暗くなっている世界は身を隠すにはもってこいだった。
「後はジミーが仕事を終わらせるだけだな」
 メトの音楽監督で指揮者でもあるジェームス=レヴァインのことだ。クラシックの指揮者とは思えない眼鏡にアフロ、丸々と
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