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小さな棺桶
3部分:第三章
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「その功績が大きいとしてな。どうじゃ」
「いや、そんなのはいいですわ」
 だがワレサは笑って。その申し出を断るのだった。
「貴族なぞ。私には」
「よいのか」
「御大層です」
 今度はこう言って断る。
「貴族なぞとは。ですから」
「よいのじゃな」
「はい」
 また頷いてみせる。
「そんなものは」
「そうか。じゃあ何がいいのだ?」
「そう言われましても別に」
 これと言って思い浮かばないのだった。彼は今の暮らしで満足していた。だからだ。
「ありませぬ」
「だがそれだと陛下のな。面子が立たぬ」
 彼が受け取らないわけにもいかなかったのだ。王にも王としての体面がある。だからそれもあってどうしても受け取ってもらわないといけないのだ。ここが難しいところだった。
「何でもいいから言ってみてくれ。ここはな」
「わかりました。それでは」
「うん。何かな」
「好きなだけビールが飲めたらいいですね」
「ビールがか」
 役人はビールと聞いてその目を少し丸くさせた。
「ビール。それだけでいいのか」
「それだけで満足です」
 また笑って話すのだった。
「仕事の後でそれを飲むことができれば」
「そうか。それでいいのか」
「もうそれで充分です」
 また答える。やはりその言葉に迷いはない。はっきりとしたものだった。
「それだけで」
「何だ、無欲だな」
 役人はワレサの言葉を聞いて言うのだった。意外といった感じだったがそれでもすぐに思いなおした。それでまた言うのである。

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