第3章 黄昏のノクターン 2022/12
22話 白亜の水都
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かる。しかしヒヨリはやや消化不良らしく、名残惜しげに視線をゴンドラが消えていった水路の曲がり角に注いでいた。
「また後で乗るさ。それより、拠点を探さないといけないだろ」
「うん、でも………あと一回だけ………」
「今は諦めろ」
「やーだー! 乗ーるーのー!」
かつてはこの近辺で物件探しをしていたこともあり、それなりに土地勘がある。幸いにも街中ではプレイヤーの姿も見られないので、物件の確保には手間取らないだろう。第一候補にのみ的を絞れば確実に押さえられるだろう。
目敏く空きのゴンドラを見つけたヒヨリの叫びを一蹴し、そのまま目的の拠点候補地へ。閑古鳥の鳴く船頭NPCは一瞬こちらを見遣ったような気もしたが、すぐに退屈そうに待機状態へと戻る。ゴンドラに熱視線を送るヒヨリを小脇に抱えて引き摺り、ヒヨリの様に苦笑いを浮かべるティルネルを伴って区画の隅に位置する防具屋に入る。なんとこの防具屋は離れを所有しており、普段は旅人に貸しているという設定で物件の賃貸契約が可能なのである。店主に物件を見せて欲しいと頼むと、店の中を掃除していたNPCメイドが道案内と下見の立ち合いをしてくれる。
そして、肝心の物件は水路を目の前にした立地で、ベータ時代には見られなかったボートの係留に使うような、擦り傷で年季の入った杭が備え付けられた桟橋を有する外観。間取りも、二人くらい余裕で入れそうな広さの湯舟を備えた風呂場に、寝室も二部屋完備。集団で生活するには申し分なく、なんとか御眼鏡にも適ったらしい。賃貸契約をズムフトの拠点から書き換える形で更新。向こうに置いてきたアイテムもストレージに収まり、引っ越しはこれにて終了。無事に隠しクエストのトリガーもクリア出来たこととなる。
「部屋は二人で使ってくれ。俺はリビングでいいから」
「そんなことより、お出掛けしよう!」
「………そんなに気に入ったのか?」
「うん! だから、もう一回乗ろう!」
俺の気遣いも空しく押し退けられる。ヒヨリはよほど気に入ったらしく、水路に向かって開かれた窓の先で行き交うゴンドラを指差して要求してくるが、現状では特に重要な用事はない。無為に利用すれば五十コルを浪費することとなる。ただ、今後の事も視野に入れれば、船頭NPCに頼り続けるのにも限界がありそうだ。というより、より端的に言えば彼等の仕様が攻略にどこまで寄与してくれるかが疑わしい。
「………それについて、少し考えたい事がある」
「どうしたの?」
「あの船頭に頼る他に、何か別の移動手段があるんじゃないかと思ってな」
「詳しく話して」
「いきなり食いつくなぁ………多分、ゴンドラとは限らないけど」
一応、誤解の無いように念を押すとヒヨリに頬を膨らまされた。ご立腹らしいが、こればか
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