第3章 黄昏のノクターン 2022/12
22話 白亜の水都
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ストがそのまま残っていなければ、トリガーも何もないのだが。
「………燐ちゃん、この街すごい綺麗だよ!」
「人族の街は本当に興味深いものばかりですね」
「これから中に入るんだ。外側だけで喜んでたら後が続かないぞ」
感動するのもほどほどに、ヒヨリ達を街の中へと誘導する。急ぎでロービアを目指した理由について一応は二人に説明しているのだが、肝心のクエストの説明をしていないので、俺と女性陣の間では緊張感に溝がある。むしろ女性陣には小遣いを渡して街中を観光してもらうのも一つの手なのではないかとも思ってしまうが、拠点については俺だけで使うのではないので、賃貸契約の可否はヒヨリとティルネルに意見を仰がなくては意味がない。ただ、全く候補が無いわけでもないので、一先ずはその所在地へ向かう必要がある。
「………で、移動手段はこれか」
門を抜け、すぐ近くに設けられている船着き場と係留されたゴンドラ、その傍で欠伸を堪える麦藁帽子に横縞シャツの船頭風のNPCを凝視する。
「凄いよ燐ちゃん、外国みたい!」
「確かに風情があって良いよな」
外国とはヴェネツィアだろうか。
あれは国ではなくて都市なのではないかと、船を見てはしゃぐヒヨリの言わんとするところを推測しつつ、一番近くにいた船頭に狙いを定めて接近する。
するとNPCもこちらに気付き、営業スマイルで出迎えられる。
「ロービアの街にようこそ! どこまで行っても五十コルだよ!」
「どこまででも………というと、街の外への用の際には出向いて下さるんですか?」
「わりぃがそいつは無理だなぁ。俺っちの仕事場は、このロービアの街だからよ」
「では、他の船では可能なのですか?」
「すまねぇ、そいつは答えられねぇな」
「………そう、ですか。教えて下さってありがとうございます」
言葉尻を捉え、より正確に情報を探るティルネルの姿勢に少しだけ感動する。偶に間の抜けた行動を起こすものの、彼女には意外と隠しクエストを探り当てる《嗅覚》が備わっているかも知れない、などとNPC同士の遣り取りを見つつ、意図せず引き出してくれた情報を頭の片隅に刻み込む。街の外まで船を出してくれるならば助かったものを、また浮き輪とビート板に頼る破目に遭うと思うと、少々気が重い。戦闘に関しては殊に苦しい事態に見舞われそうだ。
「じゃあ、商業区画に頼む。武器屋と防具屋がある並びだ」
「あいよっ、任せな!」
タクシーに乗る感覚で行き先を告げ、紫の支払いウインドウのボタンを押下。
北側の船着き場から漕ぎ出したゴンドラはヒヨリとティルネルの歓声を伴いながらゆったりと進み、橋の下を潜り抜けて中央を貫く大きな水路に出る。日常の一幕を過ごすNPCが街路を行き交うのを見
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