第3章 黄昏のノクターン 2022/12
22話 白亜の水都
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かつては主街区へ抜ける脇道だった砂の坂も、今ではフィールドに張られた水によって砂浜へと姿を変えていた。砂浜まではさほど距離もないのだが、そこに到達するより先に後方より猛然と追跡してくるヒレに追いつかれるであろうことは予想に難くない。
「もう追いつかれちゃうよ!?」
「流石に速いな………」
後ろを振り返ったヒヨリが叫びに思考をを巡らすまでもなく、後方から迫るヒレに向かい合う。
今この状況で取れる手段は限られている。その行使可能な選択肢の中で、最も多くが助かる手段というのは、これしかないだろう。
「………分かった。そのまま全力で砂浜に突っ込め」
「燐ちゃん!?」
「構うな、ここは任しとけ」
一拍おいて精神を落ち着かせつつ指示を出し、対して俺はうつ伏せの姿勢から反転してビート板もどき――――正しくは奇形のフルスの実――――に背中を預けて右足の爪先を天に向けるが如く脚を伸ばす。推進力を失ったことで追跡者との距離が縮まり、相対的にヒヨリ達との距離が離れる。要は足止めだが、生憎と勝算のない戦闘をするつもりはない。戦力的には心許ないが、攻撃範囲の狭い細剣使いと水中には無力な弓矢使いでは、あまり分が悪いばかりかヘイトが分散して思うように立ち回れなくなる恐れがある。幸い、一直線に狙ってくれるからこそ迎撃はしやすい。俺だけを狙ってくれればあとは待ち構えるだけ。防具の性能を信頼した上での単騎決戦である。
「シェアァ!」
ギリギリまで迫った魚影の、およそ頭部があるであろう位置目掛けて踵を振り下ろす。体術スキルの振り下ろし技《影月》によって放たれる踵落としは、水面を割って確かな手応え――――足応えだろうか――――を伝え、意図せぬ迎撃を受けた追跡者は水柱を立てながら仰け反るように空中に躍り出た。
その姿は、パニック映画にでも出そうな大型の鮫。全長は優に十メートルはあろう大物だった。ようやくモンスターと対面し、確認した固有名は《Fierce Megalodon》。獰猛な古代鮫といったところか。ベータ時代にはこの層で水生生物など見たことすらなかったが、何はともあれ、頭部に一撃くれてやったことでスタン状態になり、厄介な水中での機動力は殺いだも同然。愛剣《レイジハウル》を抜いて肩に担ぐように構え、落下を始める鮫の巨体を睨む。不安定な体勢から放たれた体術スキルでHPの一割を減少させているところから察するに、意外にも防御面の手薄なモンスターなのかも知れない。若しくは頭部が弱点という可能性もあるが、少なくとも隙は作れた。
これまでの追いかけっこの恨みやその他諸々のストレスを剣に乗せ、迫り来るメガロドンの喉元に片手剣突進技《ソニックリープ》を打ち出す。水
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