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ある日ある時、ある世界で
INNOCENT's World : Side of her
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ハッキリと彼女の顔を見ることはできない(あの男の子は偶然にも下から覗き込んだ形になったので見られたのだろう)のだが、かなり整った容姿をした女の子だ。第一印象は黒髪ロングの大和撫子、といったところだろう。

 実際その通りの性格であるし、その風貌はゲームなどやるのかと思わせるほどだが……彼女は正式リリース初日からプレイしている熱心なデュエリストである。実は疾風もブレイブデュエル自体、紗那に誘われたから始めたのだったりする。

 といった感じに疾風がなんとなく考えていると、当の紗那は紅茶の缶を両手で握って小さく首を傾げた。小動物のように可愛らしいしぐさだが……

「こうしてると、あの男の子もお前が美人なのに不気味で有名な“風雪の忍”だとは思わないだろうな」

「……やめてぇぇぇ……」

 疾風がからかうと、紗那は頭を抱えてテーブルに突っ伏してしまった。しかも手の間から見えている耳が真っ赤になっているところを見ると、かなり恥ずかしがっているようだ。“風雪の忍”とは紗那のアバターと戦闘スタイルから付いた通り名で、忍者のような衣装と武装で軽やかに戦う姿からいつの間にかそう呼ばれるようになっていた。……ただ基本的に内気な紗那にとって、二つ名で呼ばれることはかなり恥ずかしいことであるらしいが……まぁ目立ちたがりでない人間以外にとっては普通のことなのかもしれない。

 しかも彼女は先ほども言ったように基本的に人見知りで口下手なので、知人以外とはそれほど話さない。そのためデュエル中もそれほど言葉を発することがないので不気味だと言われており、彼女の中では通り名イコール悪い印象、というように結び付けられてしまっているらしい。

「ククク、悪い悪い。やっぱからかい甲斐があるなぁ、紗那は……」

「……うぅ……」

 恨みがましく上目づかいで見てくる紗那に疾風は苦笑して謝りつつ、口元にプレッツェルを差し出す。それをカリカリとリスのように齧りながらも、拗ねた表情を浮かべる紗那。……どうやら相当機嫌を損ねてしまったようだ。

「もぅ……疾風のいぢわる……」

「ごめんて、紗那。……機嫌直してくれよ〜」

「……じゃあ、そのうち本場の海鳴の施設に連れてって……」

「……そこは普通“ケーキいっこ”とか言うとこじゃねぇの……あぁもう、わかったよ! ちゃんと連れて行くから!」

 紗那の女の子らしいというよりはデュエリストらしい要望に若干呆れたら睨まれたので、疾風は諦めて承諾した。「けっこう交通費かかんのに……」とうなだれる疾風を見てようやく紗那は機嫌を直し、体を起こして嬉しそうに笑った。







 さて、その後しばらく休憩すること数十分。いろいろと回復しただろうということで二人は再びシミュレーターへと向かった。

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