第5話「きゅうめい」
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―――放してっ!
―――ゆきちゃん、やめて!
...あの子達の声が、聞こえる...。
―――まだめぐねえが外に!早くしないと......!
―――だめだ!もう...手遅れだ...!
あの子が私を呼ぶ声と、それを止める二人の声が、何度も繰り返される。
〈あ゛あ゛あぁぁ〜....。〉
“ゾンビ”。そう呼ばれるような存在が、私の周りに何人も蠢いている。
「っ......。」
噛まれた左腕が痛む。きっと、私ももうすぐ彼らの仲間になってしまうだろう。
「(みんな、大丈夫かな....。)」
そんな私が心配するのは、今もたれているドアの先にいる子達の事。私が、この左腕の傷を代償に、この先に一時的に避難させた子達の事を、私は心配していた。
「(ゆきさん、くるみさん、ゆうりさん......先生悪いことしたよね......。)」
背後の扉一つ隔てた先にいる子達に、私は懺悔の言葉を並べる。
〈ああぁぁ〜...。〉
ふと、彼らの内、一人が私に手を伸ばしてくる。それを視認して、私はもうダメだと脱力する。
「(あぁ....。)」
扉にもたれ、脱力するように座り込む。意識が薄れる。...もう.....。
「(ゆきさん......くるみさん......ゆうりさん......。)」
意識が朦朧とする。目の前の扉を押し開けようと手を押し付ける。
「(おなか......すい......。)」
お腹が空く。何かでそれを満たしたい。
「(あ......け......て......。)」
扉を開けようと何度も手を押し付ける。爪が扉を擦る音が聞こえる。
「(せんせい......みんな......すき......だから、どうして......あけて......くれないの?)」
爪が扉を擦り、カリカリと音を立てる。今の私は、ただ扉の先にいるあの子達に会いたい...ただそれだけが心を占めていた。
「―――めぐねえ!!」
ふと、扉の先から一際大きな私を呼ぶ声が聞こえた。
―――...ちがう。
「(ちがう、ちがう...!ここじゃ、だめだ...!)」
消えかけていた理性を振り絞り、その扉から離れる。
「(おなかすいた......けど。)」
―――...そんなの満たしている場合じゃない。
「(おなかすいた......から。)」
―――...皆に、会う訳には行かない。
「(ゆきさん、くるみさん、ゆ
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