第3章 リーザス陥落
第64話 奪われたら取り返す
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。確かに実力の差は歴然であり、ここから逆転は有り得ないだろう。でも、それでも 負けるわけにはいかない。倒れている訳にはいかない。
その事に関しては。絶対に、譲るわけにはいかないから。
『アイツは……、ゆー……はっ。わ、わたしの……、大切な……大切なっ……!』
ぐぐぐ、っと頭を必死に持ち上げる。
この高重力下の中でも、必死に顔を上げようとする。その影響か……頭が、熱く、燃え上がっているかの様だ。
『ぜったいに……わ、渡さないっ……ゆーは、……ゆぅ、はっ!』
――……大好きな人だから!
そこまで言い切る事が出来たのは、なぜだろうか?
今まで変な意地を張って、誰の前でも決して言葉に出さなかったのに。
それは、優希の前でも、ヒトミの前でも、意地になって、決して言葉にはしなかった。
だけど、そのユーリが連れて行かれる、遠い所へと。もう、二度と会えなくなってしまう。そう想ったからこそだった。魔物界と人間界の間の壁と言うものは、国と国の境とは比べ物にならない程厚い。そんな所に連れて行かれたら、もう……会えない。
生きては会えないと判るから。
自分は、絶対に追いかける。たとえどんな所に連れて行かれても、追いかける。でも、自分の力では、超えられない壁はあるんだ。それが、今回顕著に現れた。
カスタムを襲ってきた無数の巨漢のヘルマン軍。皆が、ユーリ達が来てくれたからこそ、乗り越える事が出来た。
だけど、魔人の襲撃。それで ユーリが連れて行かれでもしたら……もう、無理だ。
入る事は出来ても、生きる事は出来ない。生き残る事は出来ない。……生きて、会える事なんて有り得ない。でも、それでも会えないままに、生きるよりはずっとマシだと志津香は強く思った。
『ぜったいに……行かせないっ……!!』
だからこそ、再び力を挙げた。
もう、頭がオーバーヒートを起こしてしまいかねない程、熱く燃え上がってしまう。熱量の多さに、今度は 意識も朦朧としてきた。でも、このまま気を失うわけにはいかないんだ。完全に墜ちてしまえばもう判らないから。
必死にもがき、足掻いていた時だった。
――……大丈夫、だよ。
また、違う声が聞こえてきた。
――……何処にも行かないよ。
それは今までの声ではない。あの魔人の声じゃない。安心出来る。熱の篭った頭を優しく冷ましてくれる様な、優しい声。
でも、この声は ユーリの声じゃない。
そう思った瞬間、燃える様に熱かった頭の中に、更に冷気が吹き込んだ。心地よい風と共に、熱もゆっくりと冷めていく……。
――……おにいちゃんも、みんなも大丈夫だから。みんなが、おにいちゃんが
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