第28話
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列、その全ての者達が鎧を纏っている。
騎馬隊、歩兵隊全てである。この軍にどれほどの軍資金が掛けられているのかは想像すら出来なかった。
そしてこれほどの軍備を維持できる者など、南皮の袁紹ぐらいであろう。
「こんな大軍勢で何処に向かっているだ?」
「とう何とかって新しい相国様が悪いお人らしくてな、それを退治するために色んな軍が結託したらしいだ」
「ははぁ、んじゃあ袁紹様ってのは悪者退治に行くわけか」
「そうなるなぁ……ま、オラ達のような辺境には関係ないだ」
雑談をしながらも二人は金色の行軍に魅入る。一糸乱れぬとまではいかないがその行進は規則的で、それだけでも鍛練が行き届いた者達だとわかる。
「袁紹様って、どんなお人なんだろうなぁ……」
「…………」
ふと一人がそう呟き、二人して視線を動かし軍を観察する。
彼らの中に在るのは単純な好奇心、幾度も天下に名を轟かせてきた袁紹の存在である。
隣町の町人、村に訪れる行商人、流浪人、彼らから耳にたこが出来るほど袁紹の噂は聞いてきた。
曰く、幼少の頃より聡明で文武両道の賢人。
曰く、その先見の明で時代を先取り、巨万の富を生み出す商人
曰く、空より広く海より深い徳を持ち、未来を詠み人命を救う仙人
曰く、高笑いしながら高速移動する超人
曰く、晴れた日は屋上で身体を焼く浩二
……興味を持たないほうが難しい。
「お、あれじゃあねぇべか?」
「顔は……みれねぇな」
二人が注目したのは隊列中央にある三台の馬車だ。これも黄色で染められ、豪華な装飾が成されている。
まさしく名族に相応しい代物で、この軍の重鎮や、袁紹がいるとしたらあの中だろう。
この軍の長を人目みたいと思っていただけに落胆し――その二人の目に奇妙なものが映った。
「おい、ありゃあ……」
「……御輿?」
『ふぅん、反袁紹派も愚かな存在に過ぎん。とんだ邪魔が入ったが、俺達の戦いはこれからだ。決戦の地、洛陽が待っているぞ! 進路をとれ! 全速前進DA!』
御輿である。軍列の先頭を進み、上に乗っている者が何やら声を上げていた。
「あんなお調子者も、あの軍の一員なのけ?」
「袁紹様は派手好きって噂だぁ、気に入られているんだろうなぁ……」
二人が白い目を向けている御輿の上の男。彼こそがこの軍の総大将、袁本初であることは知る由も無かった。
「何を考えているんですか!!」
ひとしきり騒いで満足した袁紹を待ち受けていたのは、桂花による怒りと言う名の落雷であった。
「いかんのか?」
『いかんでしょ』
「いけませんねー」
「当たり前です!」
「むぅ」
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