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恋姫†袁紹♂伝
第28話
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 大陸に住む人々、とりわけ農業を営む者達の朝は早い。日が昇り始めたとは言え、まだ辺りは薄暗く肌寒い。
 そんないつもの朝に、周りの村人と同じく畑仕事の為に起きてきた一人の男。彼にある違和感がよぎった。

「今日は随分……静かな朝だぁ」

 いつもなら聞こえてくる鳥のさえずり、それが無く不気味なほどに静かだ。
 男と同じく畑仕事に勤しもうとする者達の姿が無ければ、起きるのが早すぎたのではないかと疑うほどだ。

 男が不思議に思っていると村の外から一人、必死の形相で此方に向かってきた。

「おーい! 大変だぁ!!」

「な、賊か!?」

「いや、賊ではねぇだよ」

「んなら、野生動物が畑に」

「それでもねぇだ」

「……じゃあ何なんだ」

 要領を得ない彼の返事に苛立ちを覚えつつも先を促す。男は朝が早い上にやることが沢山あるのだ。貧乏暇なしである。

「そ、それが何とも……とにかく来てくれよ!」

「何だってんだ一体」

 出来れば口で説明して欲しかったが、よほど形容しがたいものでも見たのか、言葉を詰まらせている。ここまでくると男にも好奇心が湧いた。ただでさえ娯楽が少ない時代なのだ、珍しいもの、面白いものには目が無い。

 男は彼の後に続きながら、童心に返ったような気分を味わっていた。

 ――こいつは何を見つけたのだろうか、見たことも無い生き物? 変な形の石? それとも……

 様々な物を想像しては心を躍らせる。ものによっては家族に話題を提供できるなどと考えながら






 目的地に着いた男は、得意げに遠くを指差す彼のそれに続いて目線を動かし、驚愕した。

「……なんじゃありゃあ」

「な! すげぇだろ!?」

 軍の群れ、それ自体は珍しいものではない。先の黄巾の乱や、各地の賊多発に伴い行軍は良く目にする。では何故驚いているか―――それはその軍の出で立ちに理由があった。

 黄色である。身体を守る胸当てに始まり、兜、手甲、剣の装飾に至るまで黄色で統一されている。良く手入れされているのか光沢があり、光の角度によっては金色に輝いているようにも見えた。遠目で見るその光景は、さながら黄金の竜が移動しているようだ。

「一体何処の……」

「多分、南皮の袁紹様の軍勢だぁ」

「おめぇ軍旗の文字が読めるのか!?」

「うんにゃ、だどもこげん派手な軍はそこしかねぇべ」

「な、なるほど」

 軍は金食い虫である。兵糧、装備、賃金、維持するだけでも金が掛かる存在だ。
 鎧を着けているのは正規軍の証、大多数の歩兵は民衆に毛が生えた程度の装備が普通である。

 以上を踏まえ眼前の軍はどうだろうか――

 永遠に続いているのではと思うほどに長い軍
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