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歌集「春雪花」
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 小夜明けて

   時雨し朝

    幽かなる

 淋しさ落つる

   憂いし静けさ



 空が白み始め、夜が明けるのだなと思っていたら…外から小さく雨音が聞こえてきた…。

 十月も終わりに近付き、肌寒い朝…。

 愛した彼のことを考え続け、一人淋しく迎える朝は…ただただ、憂いを帯びた静けさだけが佇むばかりだ…。



 届かぬと

  知りゆきてなお

   彷徨いて

 恋しき影を

     求む秋風



 想いは届くこともなく…況してや、彼に愛されることなぞありようもなく…。

 解ってはいる…知ってはいるが…どうしても諦めることが出来ない…。

 恋い焦がれ…彼を求めてしまう私は、まるで過ぎ去る秋風の様に虚しいものだ…。

 会うことも儘ならず…声さえ聞けず…触れることも叶わない…。


 風吹きて揺らすは…枯れ果てた尾花のみ…。




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