7部分:第七章
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第七章
「用足しもいちいち家族や看護士に言わなくちゃならないしよ。風呂だって入られないしよ」
「それは仕方ないですね」
「仕方なくあるか。あばらも何本も折れてるしな」
それもであった。
「合計何だ?十五本は折れてるか」
「十五本ですか」
「しかも出血多量だったんだよ」
それもなのだった。
「そのせいで本当に死にそうだったんだよ。まあそれでも背骨とかは無事で後遺症もないそうだけれどな」
「不幸中の幸いじゃないんですか?」
「なあ」
皆このことは素直に喜ぶべきだと思ったし実際に口にもした。
「トラックにぶつかってそれって」
「下手しなくても死ぬしな」
「それはそうだけれどな」
高山もそれは憮然としながらも認めた。
「俺もよく生きてるものだと思うよ。医者の話を聞いて思ったさ」
「そうですよね。やっぱり」
「とりあえず生きていてよかったじゃないですか」
「全治三ヶ月だけれどな」
やはり重傷である。
「暫くは入院してそれでリハビリだ。復帰はかなり後だな」
「そうですか」
「ああ。しかしな」
ここで高山は。これまで不平ばかりだったのを止めた。そうして神妙な顔になって言い出した。
「本当なのかもな」
「本当とは?」
「だからな。祟りだよ」
その神妙な顔でスタッフ達に話してきた。
「祟りな。あの作品にはその話あっただろ」
「はい」
「それですか」
スタッフ達にもわかることだった。何しろ彼等はそれを恐れて御祓いをしてもらったからだ。それでわからない筈がなかった。
「それだったのかもな」
「そうかも知れないですね」
若田部が今の彼の言葉に応えて言ってきた。
「実は昨日の朝話を聞いた時」
「すぐに祟りだって思ったんだな」
「はい、そうです」
率直に高山に言葉を返した。
「というかそれしか思えませんでした」
「だろうな。やっぱりな」
「けれど助かって何よりでした」
若田部も彼を好きではないがそれでもこの言葉が自然に出たのだった。つまり彼はそこまで悪人ではないということである。これはいいことであった。
「本当に」
「ああ、俺もそう思う」
ここで高山はしんみりとした口調になった。
「それはな」
「ですか」
「あるのかもな」
今度は自分の真上を見上げた。そのうえでの言葉だった。
「本当にな」
「何がですか?」
「何がって決まってるだろ?」
今度はシニカルな笑みを浮かべての若田部への返答だった。
「この場合はあれだよ、あれだ」
「祟りですか」
「それだよ。やっぱりあるのかもな」
言うのはこのことだった。
「本当にな。だから俺はこうして今ここにいる」
「そういうことですか」
「全く。世の中わからないものだ」
今更わかるなんてな、と
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