第3章 リーザス陥落
第62話 レッドの町に迫る驚異
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……否、する様な事をすると思えるか?とユーリは一瞬頭をよぎっていたのだ。一瞬頭の中を過ぎり、そして首を直ぐに横に振った。
そんな事をする筈が無い、と。
「あう……」
流石のシィルも庇いきれない。
真面目になったランスに仕える事もとても良い、と何処かで思ってしまっていたが、それも夢物語だと、シィル自身、思ってしまっているのだから。
「おいこら! 黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがって! そもそも、オレ様は正しい行いしかしていないぞ! それを人を悪者みたいにいいやがって!……まったく」
清々しいまでに、明後日の方向へと進んでいるランス。
天上天下唯我独尊とはこの事であり、ランスがした事は全て『良い事』と捉えてしまっている。意図して言っている訳じゃないから、更に性質が悪い。
「………」
流石のセルも、ランスの一言を訊いて、ちょっと黙ってしまった様だ。
「はぁ……」
ユーリも傍から聞いててセルに同情をしてしまっていた。茨の道……と言うより針山地獄に登ろうという気位は必要だろう。
「ははっ! 流石はランスだな。ここまで来りゃ清々しいってもんだ」
「……ミリの対抗馬だよ。あいつは」
「何言ってんだ? ランスのテクじゃ、オレは満足しないぜ?」
「誰も んなこと言ってない」
ミリとユーリのやり取りは、まだスーには難しいらしく、首を傾げている。だけど、何処となく楽しそうなのは伝わった様なので、笑っていた。
そして、セルはと言うと……、その試練を前にして一声!
「とにかく、私の力でランスさんを正しい人に導きます!これは、神が私に与えられた試練です!」
……まるで、諦めてなかった様だ。何処となく、あきらめの悪さは、ランスに似ていると言っていいだろう。
「このままだと、本当に付いてくる、って言いそうだ」
「ナラ、スーモ!」
「スーは駄目だ」
「ナンデ……?」
それを聞いて、悲しそうな顔をするのはスーだ。拒絶された、と思ったからだ。短い時間だったけれど、ユーリの事は信じてたし、好きだとも想っていたのに。
「……危ないからな。これから行く所はこれまでよりもずっとずっと」
だが、スーはユーリの目を見て、理解した。それは拒絶をしているのではない。ただ、自分を思ってくれての事だということを。
「それに、ここにはスーより、小さな子達がいるだろ?」
「アッ……」
ユーリは指をさしてそう言う。教会には、他にも孤児達がいる。中には、年端のいかない子供も多く、スーの方が歳上だろう。
「今日からスーの家族になるんだ。ラプ達にしてあげた様に、皆を守ってくれ。……出来るな?」
「ウ、ウンっ!」
笑顔でスーはユーリに抱きつく。
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