第163話 復讐の顛末 中編
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から無かったことにした方がいい。そうは思わないか? それに?異度が蔡一族を皆殺しにすれば済む話だ。逃亡した蔡一族の中には幼子もいる。そうそう遠くには逃げ切れん」
正宗に意見する近衛兵に気分を害すことなく自らの意見を近衛兵に話した。それを聞き近衛兵は一応納得した様子だった。少々釈然としない様子だったが、正宗の意見に黙って従おうと思ったのだろう。
「拘束している者達には『今夜のことは他言無用、他言した場合は死罪とする』と伝えておけ。いいな?」
「かしこまりました」
近衛兵は正宗に拱手した。
「ところでお前は見ない顔だが新入りか?」
「鉅鹿郡都尉・臧宣高様にお引き立ていただき、此度の荊州への遠征に加えていただきました」
「榮菜の推挙か。名は何という?」
正宗は近衛兵に声をかけた。
「孫仲台と申します。生まれは臧宣高様と同じく?州泰山郡にございます」
正宗は一瞬考える素振りを見せ能力で「孫仲台」なる人物を能力で照会した。すると彼は目を見開き近衛兵を凝視した。彼がまざまざと近衛兵を視線を向けると大人しめだが胸の膨らみがあった。あまりに胸が小さいので正宗は彼女のことを男と思っていたのかもしれない。その証拠に二重に驚いている様子だった。
正宗が驚いたのは近衛兵の素性を知ったからだ。彼女は孫観といい。正宗の知る歴史では彼の配下である臧覇の側近だった人物だ。臧覇の側近は孫観以外に呉敦と尹礼がいる。この三人は歴史では曹操に厚遇されたことから有能だったことは間違いない。いつの間にか側に逸材が居たことに正宗は驚愕している様子だった。
「孫仲台、此度の従軍には呉黯奴と尹盧児も加わっているのか?」
正宗は額に手を当てながら視線を孫観から逸らし、徐に呉敦と尹礼の名を出した。今度は孫観が驚いていた。正宗の発した言葉に戸惑っている様子だ。彼女からすれば、無名の自分たちを何で正宗みたいな貴人が知っているのだろうと思ったのだろう。彼女の反応から多分、二人は既に榮菜の配下となっているとみて間違いない。
「清河王、何故に二人のことを?」
「榮菜から同郷の者を仕官したと聞いていたのだ」
正宗は冷静を装いながら咄嗟に嘘をつき孫観に答えた。孫観は納得した様子で頷いていた。
「二人は荊州に来ているのか?」
「はい。尹盧児は臧宣高様に従軍しております。呉黯奴は私と一緒に近衛に配属されました」
「榮菜の元に従軍できず残念では無かったか?」
「いいえ。近衛に配属できたお陰で清河王と知遇を得ることが出来ました。臧宣高様のご配慮感謝いたします」
一瞬、孫観は口を噤んでいた。朝敵の族滅とはいえ、老若男女問わず虐殺する凄惨な体験をしたであろう彼女は思うところがあったのかもしれない。しかし、直ぐに平静を
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