第163話 復讐の顛末 中編
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れん。我が軍は蔡徳珪が襄陽城に籠もったままであることで蔡徳珪への警戒が緩んでいることは確かだ。狡猾な蔡徳珪なら、この隙を利用しようと考えてもおかしくはない。本隊五万が荊州に到着すれば、蔡徳珪が私に野戦を挑んで勝つ機会は無いだろうからな」
正宗は虚空を凝視した。
「朱里、桂花。蔡仲節は予定どおりに逃亡させる。私達は蔡徳珪の夜襲に備え準備するぞ。この宿営地に既に蔡徳珪の素破が潜り込んでいる可能性もある。心して動いてくれ」
正宗は朱里と桂花に向き直り命令を下した。二人は頭を下げ正宗に対して拱手した。
「桂花、お前は麗羽の家臣であるにも関わらず、私の家臣のように扱い済まないな」
正宗は桂花に徐に気遣う言葉を口にした。
「いいえ。気にしておりません。此度の蔡徳珪の乱を治めましたら、麗羽様を揚州刺使にご任じいただき、それと私めに相応の官職をいただきたく存じます」
桂花は正宗に拱手したまま自らの要望を願いでた。彼女が今まで正宗に露骨に要求することは無かっただけに正宗も以外に思っている様子だ。しかし、洛陽を都落ちして冀州で亡命し現在に至るまでそれなりに時間が経過している。そろそろしっかりとした立場を正宗に用意して欲しいと思うのは自然のことといえた。正宗も彼女の要求を聞き、一瞬申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「良かろう。元より麗羽の揚州刺使を据えるつもりでいた。荊州の混乱を理由に使持節の権限で現在の揚州刺使を罷免し、揚州刺使の治所である寿春県がある九江郡太守にお前を据えることを約束しよう。正式な任官は私が洛陽に上洛した時に皇帝陛下に上奏しよう」
正宗の言葉を聞いた桂花は満足そうだった。
「正宗様、ありがたく存じます」
桂花は正宗に対して礼を述べた。
「これからも麗羽を支えて欲しい。私はいずれ冀州に帰らねばならない。その時、麗羽の支えとなるのはお前だ。麗羽の第一の臣として頼むぞ」
正宗の言葉に桂花は強く頷いた。
「元より私は麗羽様のために尽くす所存です。正宗様の志のため、麗羽様の志のために揚州を掌握してご覧にみせます」
桂花は正宗に言うと朱里は笑顔に見ていた。漸く麗羽にも本拠地を得る目処が立ったからだろう。現在は麗羽は居候状態であったし、桂花も口には出さないが気苦労があったに違いない。
「桂花殿。まずは蔡徳珪の夜襲に備えましょう。ここで躓いては正宗様のお言葉も空手形になってしまいますよ」
朱里は桂花に笑顔で言った。
「そうでした。蔡徳珪が夜襲を仕掛けてこなければ、それはそれで良いと思いますが用心だけはしておかなければなりませんからね。それに蔡徳珪の夜襲があった方が我が軍にとっても利は大きいかと思います。夜襲を仕掛けてきた蔡徳珪の軍を蹴散らせば、荊州の民
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