第163話 復讐の顛末 中編
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」
朱里は視線を下に向け考え込む仕草をした。
「正宗様、私は少々蔡平のことを色眼鏡で見てしまったのかもしれません。未熟者である私はお許しください」
朱里は正宗に頭を下げた。その表情は反省している様子だった。
「謝らずともいい。引き受けてもらえるか?」
「正宗様、蔡平の件は私が謹んでお引き受けいたします。ただし、一つ条件がございます」
正宗は朱里の言葉に訝しんだ。
「条件とは何だ?」
「蔡平の復讐の件はもう何も言いません。ですが、蔡平は己の行動に責任を負わねばなりません」
朱里の表情は真剣な表情だった。先ほどと違い蔡平の師として正宗に意見しているように見えた。その様子を感じ取り正宗も神妙な表情に変わった。
「もし、蔡一族を一人でも逃がした場合、蔡平は蔡徳珪に内通し正宗様を裏切ったとし処刑することをここでお誓いください」
正宗は朱里の言葉に難しい表情になるが拒否はしなかった。
「蔡一族を取り逃がせば、荊州の民だけでなく荊州の諸豪族に対する正宗様への権威に傷かつくことは必定です」
続けて朱里は正宗に説明した。それを正宗は黙って聞いていた。正宗は蔡平に失敗すれば死んで償えと伝えた。
「いいだろう。もう既に蔡平には失敗すれば死んで償えと伝えている」
朱里は正宗の言葉を聞き目を伏せた。
「朱里、お前が気を病むことではない。無理を押して蔡平に機会を与えた。そして、蔡平はそれを望んだのだ。ここに至っては他人が口出すことではない。私に出来ることは結果を待つことだけだ」
正宗は物憂げな表情を浮かべ優しく朱里に言った。
「正宗様、承知いたしました。蔡平は覚悟して出向くのならば、私達は見事復讐を果たし戻ってくるのを待ちましょう」
朱里は正宗に対して気丈に答えた。
「蔡平はきっと無事に戻ってくるだろう」
正宗は笑みを浮かべた。朱里は正宗に対して頷いた。
「朱里、お前は今夜にも蔡徳珪が夜襲を仕掛けてくると見ているのだな」
正宗は朱里と桂花に蔡平のための復讐の場を用意することを説明し終わると、朱里と桂花が警戒する蔡瑁による襲撃について話し合っていた。正宗も今夜が危険であると危惧している様に見えた。
正宗の問いかけに対して、それを肯定するように朱里は深く頷いた。
「正宗様もお気づきのはずです。蔡仲節達の処刑を延期したことで蔡徳珪に考える猶予を与えることになりました。そして、蔡仲節達の命の灯火はわずか。明日には処刑される運命です。動くなら今夜から日が昇る前しかないでしょう。我が軍は多くの戦場を経験した練度の高い騎兵を主力にした陣容です。野戦にて蔡徳珪軍が我が軍を圧倒することは難しいはず。それに我が軍にはまだ本隊五万が控えてい
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