第163話 復讐の顛末 中編
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すれば正宗様の蔡一族への苛烈な処断に不満を抱く者達もおいそれとは動けなくなるでしょう」
桂花は正宗の計画を擁護した。彼女の考えは一理あった。荊州を牛耳る蔡一族と良好な関係を築いていた者達も居たはずである。彼らは表向きは正宗に従っていても、彼らの内心を知ることは難しい。だが一つ言えることがある。幾ら彼らが正宗に対し叛意を抱こうと、その意思を行動に移すには民の信認が無くては正宗に対して反旗を翻すことは難しいということだ。その意味で荊州の民に正宗の良い人柄が伝わる噂話は正宗にとっても益になる。ひいては美羽の荊州統治を助けることになるだろう。
朱里も桂花の話を聞き一定の理解を示している様子だったが、まだ何か言いたげな様子だった。
「軍を危険に晒してまですることではありません。兵はモノではないのです。蔡平の復讐心を満足させるために部下達を危険に晒すことなどできません」
桂花の考えに朱里は不満を示した。
「私の判断に不服か」
「いいえ、過程はどうであれ蔡徳珪の軍に打撃を与える機会を見過ごすような愚かなことはする気はありません。ただ、ここまで正宗様に過分の計らいを受けた蔡平が正宗様にいかにして報いるつもりなのかが気になっただけです」
「蔡平に問題があるのか?」
正宗は朱里に質問した。
「あの者は正宗様の計らいがどれ程のものか承知しているように思えません。あの者は復讐に目を曇らせ周りが見えていません」
「私は蔡平に恩を着せるために手心を加えたわけではない」
「それは分かっております」
「ですが彼女は理解する必要がございます。今後、正宗様に仕え禄を食むというなら尚のことです」
正宗は厳しい表情で正宗に意見する朱里を見て笑みを浮かべた。
「正宗様、私は真剣に話しているのです」
「分かっている」
正宗は真剣な表情に変わり朱里を見た。
「朱里、お前が多忙というのは分かっているが蔡平の面倒を見てくれないか?」
朱里は驚き正宗を凝視した。
「私は蔡平と剣を交えた。あの者の剣は憎しみに満ちていた。だが、その剣技は荒削りであったが真っ直ぐであった。私はいろいろな者と剣を交えてきた。だから分かるのだ。あのように真っ直ぐな剣を振るうことができるものであれば、磨けばきっと良き官吏となることができるとな。私の夢には多くの官吏が必要となる。だが、良吏とはそうそういるものではない。良吏となれる可能性がある人材が目の前にいるのだ。ならば、育ててみたいと思うのは間違いだろうか?」
正宗は朱里に対して自分の蔡平への想いを吐露した。それを朱里は黙って聞いていた。
正宗の話が終わると朱里は沈黙したまま正宗の言葉に感慨深げな様子で目をつぶった。
「正宗様がそこまで蔡平をお買いになられていたのですね
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