暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
奇妙なタッグ
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中に一つの感情が芽生えつつあるのをどうしても自覚せずにはいられなかった。

知りたい。

仮想世界と現実世界の壁を越えた強さ。それは、シノンの目指す境地そのものだ。この世界で、狙撃手としての冷静さ、いや冷酷さ――――非情さを身につけ、朝田詩乃としての自分に宿る弱さを打ち砕く。その強さを与えてくれるターゲットを求めて、半年間この荒野を彷徨ってきた。

全身全霊を振り絞ってこのキリトと――――そしてその彼さえも己より強いと零す《ユウキ》という強敵と戦い、勝てれば、きっと――――

「それにしても、おかしいな」

周囲を軽く見回していたキリトの呟きが、シノンの想念を破る。

黒衣の剣士はゆるく吹く風になびく長い黒髪を鬱陶しげに払いのけながらも、思わずドキッとするほどの鋭い目つきで辺りを睥睨していた。

「ど、どうしたのよ?おかしいって何が……」

「……この(夏侯惇)結構撃っただろ?なら、その銃声を聞いたプレイヤーが漁夫の利を狙ってこっちに駆けつけてきてもおかしくないはずだ。なのに、その気配もない」

システム上は存在しない、一から十までロジカルなこの世界で《気配》などというこの上なく曖昧なものを断じる少年に呆れつつも、しかしシノンは僅かに首を傾げた。

いつもならば、戦闘を終えた後の急かされるような移動は狙撃手クラスの義務の一部のようなもの、と考え、すぐにでも移動するクセがついてしまっているのだが、それがどうして、今日に限ってやってこない。

―――キリトがついてるから……?

僅かにでも脳裏をよぎった馬鹿馬鹿しい考えをすぐさま殲滅し、少女はそこで「あれ?」とさらに首を傾げた。

本当に、やってこない。

キリトに習い、気配などと大仰なことは言わないが、それでもベテランであるシノンは敵が出す《環境音》というものは多少なりとも耳が覚えている。

例えば、茂みの中を這う際の葉擦れの音、砂利が生み出す足音など。それらの音は、慣れれば風鳴りの中でもはっきりと分かるものだが、それでもまったくと言っていいほど聞こえない。

「……偶然、聞こえる範囲にいなかった、とか?」

「ああ、もちろんその可能性だってある。……なぁシノン、俺はこの大会初めてだから分からないことだらけだけど、それでもこれくらいは分かる」

真剣な、これ以上ないほど鋭い目線が、周囲から離れて己の実を貫くのをシノンは感じた。

一呼吸置き、少年は言葉を紡ぐ。

おそらく、おそらくは少女が、心のどこかで気付いていながら必死で見なかったことにしていた事実を

「まだ一時間も経ってない。なのに、それなのに――――」

言う。

「プレイヤーが少なすぎないか?」










まず、動きがあった
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