くらすちぇんじ・まりあさま
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色の鬣が柔らかくて、くすぐったい。
「…………」
「あら。まだティーが怖いの? リースリンデ」
「……いえ……」
ティーと戯れてる間に、私の手から離れたリースリンデが。
『疑惑の眼差し』を体現しつつ、宙に浮いてティーを見下ろす。
「目の前で起きたことですし、状況はきちんと理解してるつもりですけど、やっぱり複雑な心境です。本当に、バルハンベルシュティトナバール様とは別個の存在なんですよね? そのドラゴン」
精霊族のかつての天敵、太古の支配者『ゴールデンドラゴン』は。
リースリンデの言葉に、くわあ〜っと、のんびり欠伸を返した。
「そうよ。厳密に言えばティーとは違う。でも、ティーの記憶を持ってる。だから、貴女を襲おうとはしてないでしょう?」
「にゃうにょうにゃみ」
「ですって」
「すみません。何を言っているのか、さっぱり解らないです」
「ににゃわにゃいにゃ」
肩に乗ったまま呆れた息を吐く、梟ほどの大きさの彼は。
フィレス様の『言霊』で在りし日の姿(ただし復元可能な規格)をとっても愛らしい形で取り戻した、元、黒い本。
遥か昔も昔……私が生まれるよりずっと前の時代に絶滅した筈の天敵が、現代になって突然現れたんですもの。
リースリンデが戸惑うのも無理はないわ。
話は、フィレス様達が水鏡の泉を離れるちょっと前。
ベゼドラに買ってもらった服を私が受け取った時点まで遡る。
「ところで、この本は何?」
ベゼドラが投げ渡してきた黒い表紙の本を掲げて、彼を見上げると。
不機嫌絶頂な紅い目が私を一瞥して、ふいっと顔を逸らした。
「ティーの日記だ。俺はもう読み終わったから、お前の好きにしろ」
「ティーの日記?」
『扉』である私がティーの家で過ごしたのは、ほんの数時間程度。
彼が日記を書いていたなどとは、当然知らなかった。
片目を奪ってしまったし、それ以降は書いてなかったんだろうな。
と思いつつ、私のこともちょっとは書いてあるのかな?
なんて、気になって開いてはみたけど、文字が古すぎて全然読めない。
「かつて神々が使っていた神聖文字……よね? これ。私の時代でも読める人間はいなかったのに、よく現代まで残ってたわね」
「雪山の廃屋で拾った」
雪山の?
ティーに拾われた時の山は、どちらかといえば暖かいほうだったのに?
「あれから何をしていたのかしら、ティー」
彼の物と聞いては、棄てるのもためらわれる。
でも、私が持ち歩くには大きいし重いし……
と悩んでいたら、フィレス様が
「では、本に自立してもらいましょう
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