くらすちぇんじ・まりあさま
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あ。
こっちのことだと思ったのね。
服と合わせて頭に被っているのは、上着と同じ素材と色で作られている、猫の頭部を象った帽子。
首筋まで隠せる後頭部の覆いに、ピンと立った三角形が二つ並ぶ頭頂部。
聴覚を伴わないこの耳に、何の役割があるの?
それに、顔の横から肩にかけて垂れている紐も、不思議な存在感だわ。
先端に丸い飾りが付いたこれ、結べば良いの? 垂らしておけば良いの?
いつか人里へ降りる必要が出てくるかもと考えて、髪や目の色を隠す為にお願いした被り物だけど、現代人の感覚ではこんな擬似物が一般的なの?
でも、擬似にしては、本物の猫とはだいぶ様子が違ってる。
白目が無い縦長の黒い目とか、笑ってるようにも見える口元? とか。
ひげの位置も、普通は目の真下には無いわよね。
角度次第でそう見えるとしても、こんなに太くはない筈。
左右に三本ずつしか無いのも不自然。
多少省略してたり、本物らしさを横に置いてるとしても。
これ、猫が笑いながら頭に噛みついてるように見えるんじゃない?
猫に噛まれたい欲求でもあるの?
「現代人の感性は独特ね」
「人間そのものが変なんです。何がしたいのか、さっぱり解りません」
「この装飾に関しては、私にも解らないわ。狩りで獲た毛皮を服にしていた部族の名残、ってわけでもないでしょうし」
昔の人間にとっての猫は、大地にあっては農作物の守り神、海にあっては船の守り神と崇められた、聖なる生き物。
それを狩る部族なんて、どの国、どの大陸にも存在しなかった。
少なくとも私達、天神の一族が生きていた時代では。
ああ、神聖な生き物の力にあやかろうとして……る、とも、思えない。
「謎ね」
「はい。意味不明です」
そういえば、先日まで現代の王都に居たと言ってたっけ。
きっと、不思議な物事をたくさん見てきたんでしょうね。
精霊には受け入れがたい物事を。
目が据わってるわよ、リースリンデ。
「みゃいみゃ!」
「きゃあ!?」
突然、右肩にズシッと重いものが乗ってきた。
仔猫を思わせる、ちょっと高めの愛らしい鳴き声の主に目を向けると。
彼は黒い縦筋が入った金色の目で私の顔を覗き込み、頬をすり寄せた。
「びっくりした……どうしたの? ティー」
「にょにょみょうにゃにゃっにょうにょみゃあうにゃ、みゃいみゃ」
「まあ……。ふふ、ありがとう。他でもない貴方にそう言ってもらえると、もっと嬉しくなるわ」
「みみみゃみょおみょおにゃわいいにゃわにゃ」
「そう? 自分では普通だと思ってた」
「にょんにゃうにょわにゃい」
くるくると喉を鳴らして寄り添うティーの仕草は、まるで本物の猫ね。
金
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