第五十話 焦り
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に商船を出せなくても辺境の開発はフェザーンに起点が有った方が効率が良い。フェザーン方面からと帝国中央部からの二方向から開発を行う。それにフェザーンが無くなれば同盟領に商船を出せる」
「……」
「それに商船を出せないなら同盟からフェザーンに来させるという手も有る。荷を買い取って辺境に運ぶさ」
「止せ! それは危険だ。フェザーンは卿を完全に敵と見做すぞ」
「今でも敵と見てるよ」
俺が笑うと“駄目だ!”と言ってフェルナーが激しく首を振った。
「敵とは言っても今は卿の邪魔をするくらいだ。だがそれをやればフェザーンは卿を潰しに来る」
「……私を殺しに来るという事か?」
「卿とは限らない、エリザベート様を殺すかもしれない。それだけで卿の地位を揺るがす事は可能だ」
なるほど、可能性は有るな。
不意に膝を揺す振られた。フェルナーが真剣な眼で俺を見ている。
「エーリッヒ、焦るな。卿らしくないぞ」
「……焦っているように見えるのか?」
「ああ、俺にはそう見える。気持ちは分かる。難題はみんな卿の所に行く。その殆どが貴族達の尻拭いだ。不本意だろうし不愉快だろう。だが焦るな、卿には似合わんぞ」
また膝を揺す振られた。
「卿にもしもの事が有れば改革が頓挫しかねん、自重してくれ。卿は不満かもしれないが帝国は間違いなく良い方向に進んでいるんだ。そしてその流れは徐々に大きくなっている」
「……分かった。買収の件は撤回する。だがフェザーンの動向には注意をしてくれ」
「了解した。チームを作って対応させる」
フェルナーがホッとした様な表情をしていた。
「話しを変える。アントン、捕虜交換が終ったらブラウンシュバイク公爵家の領地を視察しようと思うんだが」
「ずっと延び延びになっていたな。行った方が良いと思う。大公閣下御夫妻、エリザベート様も一緒の方が良いだろう」
「遊びじゃない、仕事だ」
「ああ、仕事だ。領民達に家族の親密さを見せるのもな」
なるほど、そういう事か。
“分かった”と言うとフェルナーが大きく息を吐いた。
「少しでも休んでくれ。卿には休息が必要だ」
「そうするよ。……アントン、私は焦っているか?」
「ああ、俺にはそう見えたよ」
「そうか、……有難う、止めてくれて」
「気にするな」
そう言うとフェルナーは立ち上がって椅子を戻して部屋を出て行った。焦りか……、そんなつもりは無かったが……。
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